2007年12月14日
歯科医師:ノブデンタルオフィス(東京都中央区)院長 北原信也

歯は健康のバロメーター

最近、アメリカで子供が虫歯で亡くなるという痛ましいニュースが世界中で紹介されました。「えっ 虫歯で人が死ぬの??」かなりの方が驚かれたと思いますし、その報道を見て怖くなって来院したという患者様もいらっしゃいました。日本ではそれくらいインパクトのあるニュースでもない限りは、歯には無頓着、痛みが出てから歯医者に行くというのが一般的ですが、歯の先進国であるアメリカやスウェーデンなどでは、6ヶ月以内にケア(クリーニング等)に出かける人の割合は70%にも達し、5?6%と言われる日本とは大きな隔たりがあります。

アメリカでのニュースはそんな口腔の関心度が非常に高い国に起きたこともあり話題になりましたが、歯の痛みを訴えていた子供に我慢をさせたため、結局は炎症が顎骨にまで及び、著しい全身機能の低下をきたし運ばれたときには手遅れだったようです。「何で早く歯医者に連れて行かなかったの?」という疑問もわくと思いますが、アメリカは医療費が高くほとんどが自費診療か一部民間の保険を使うかのどちらかで、日本のような国民皆保険制度がありません。ですから、亡くなった子供の家は残念ながら歯の治療費を払えないということで我慢させたようです。日本はありがたいことに、保険証さえ持っていけば最低限の医療は受けることができますので、通常は手遅れになることはほとんどありえないと思います。しかし、忙しいからとひどくしてしまうとアメリカで起きたような最悪の結末になることがあるということをぜひ忘れないでいていただきたいと思います。

ここで歯が痛くなくても、なぜアメリカやスウェーデンでは皆が予防で歯科医院に出かけるのでしょうか?まずはアメリカでは前述しましたが、医療費が高いためにできるだけ医者にはかかりたくない、つまりは大きな処置になればなるほど高い治療費を払わされるのであれば、始めから予防をして、仮に問題が起きても小さな問題で解決しお金をかけないで治療をしてしまおうという考え方があります。一方のスウェーデンでは20歳まで歯の治療費が無料で、かつ定期的なケアを義務付けています。よって20歳までの虫歯罹患率が0%に近く、予防によって歯の寿命を延ばすことができることを国レベルで実証したといわれています。よって、この2つの国での歯のケアは、理由は違えど高い受診率であるのは、それぞれが医療費の問題に絡んだものだからと言えます。

アメリカでは高いので、自己防衛をする。スウェーデンはタダだが、義務なので歯医者に行く(このバックグランドとしてスウェーデンは医療費で国の財政がパンクしそうになったが、予防を無料にすることで、結果的に健康な人たちが増え、医療費を抑えることができた)。日本ではどうでしょうか?予防にお金がかかる(保険がきかない)、また治療は最低限であれば大した治療費をかけなくても治療が受けられるということで、何もないのにわざわざ歯医者に行きたがらないといった問題があると思います。

しかしここでよく考えていただきたいのは、今は大丈夫でも将来はどうか?ということです。痛みもなく、一応ちゃんと噛めるときは不自由がないので関心はありませんが、いざ歯が悪くなりだすと、実は加速度的に悪くなり、あっという間に入れ歯になってしまいます。「8020運動」を聞いたことがあると思いますが、80歳で20本の歯が残っているようにがんばりましょう(通常全部で28本)というものです。実際、日本では最新の調査で80歳では平均8本程度しか残っておらず、逆に20本以上を有する割合が15%ほどです。では先に紹介した国々はどうでしょうか?スウェーデンはすでに8020を達成し、アメリカでも2010年には達成すると言われています。そして日本は2030年以降になるだろうという統計分析もあります。先進国中で最低レベルのこの状況をもう一度見直してください。歯は健康のバロメーターです。QOLが叫ばれるこの時代に、歯があってきちっと噛むことができれば当然健康で長生きできます。将来を楽しく生きるためにも、歯の先進国では当たり前の「歯科医院でケア」を定期的に受けることをお勧めします。