2008年01月21日
「日本消化器病学会」専門医、「日本内視鏡学会」指導医、
「日本内科学会」認定医
「日本アレルギー学会」所属、「日本東洋医学会」所属
林医院(大阪府大阪市)院長 林 保
アレルギーと生活習慣病
アレルギーや生活習慣病は遺伝するの?
遺伝って、本当に不思議ですよね。顔が似ている、仕草が似ている……この子は、お父さん似、お母さん似?赤ちゃんの笑顔に一喜一憂。でも、病気だけは似てほしくないものです。
アレルギーや生活習慣病を持つ患者さん(特に女性の方)から聞かれることが多いのが、「病気は子供に遺伝するの?」という質問です。結論からいいますと、アレルギー性の疾患や、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病は、遺伝の要素と環境の要素が合わさって発症するものです。特に子供の場合、お父さんやお母さん、兄弟姉妹にアレルギーを患っている人がいたら、充分気をつけてあげるようにしましょう。
アレルギーは、免疫系が「敵」だと間違って覚えてしまい、次に接触したときにそれを排除しようとする反応が過敏に出てしまう状態です。そして、この反応が起こりやすい人のことをアレルギー体質といいます。とはいえ、アレルギー体質の人が、必ずアレルギー症状を発症するというわけでもありませんのでご安心を。一生、アレルギーを発症しない人もいます。これだけ医学が発達しているのに、実はアレルギーについては未知の部分が多く、アレルギー体質があるかどうかを調べる方法も今のところ部分的にしか開発されていません。年齢によって治る場合もありますが、一度発症してしまうと完治させるのは大変難しくなります。その前に生活環境を整えて体質改善を図るなど心がけておけば、例え両親がアレルギー症状を持っていても、子供も同じ病気に悩まされる可能性は少しでも低くなります。
子供は風の子……は昔の話?
すきま風の吹き荒ぶ古い家から、豪華なマンションへお引越し。さあ、これから快適な生活が……と思いきや、とたんにアレルギー症状が。住宅建材、壁紙などに問題がある場合、機密性の高い部屋は適温多湿を好むダニやカビを繁殖させる原因となります。一日中部屋を閉め切ることは避け、小まめに換気を心がけましょう。
快適な冷暖房生活、便利な交通手段、新鮮な日光、空気にふれる機会の減少、多種多様の食事(脂肪、加工食品、合成保存料、着色料、添加物など)は、皮膚・鼻・咽頭・気管支粘膜・消化管の粘膜に影響し、風邪を引きやすい体・新しい感染症・アレルギーの増加など免疫力の調整に問題が生じてくると考えられます。今後、古くて新しい粘膜免疫という第2の免疫を考える必要があるのではないでしょうか?
夜遊びはアレルギーのもと?
コンビニ、24時間レストラン、携帯、インターネット。今や9時、10時は宵の口。塾帰りの小中学生も平気で歩いている時間です。そんな現代社会って、やっぱり体にいいはずはありませんよね。 人間の身体は、太陽の下で活動し、夜は休むようにできています。睡眠と覚醒のリズムをコントロールする体内時計がおかしくなることは、すなわち、自律神経や内分泌ホルモンが正常に働かなくなるということです。不規則な生活や睡眠不足が続くと、体の生体バランスが崩れて、当然、免疫力も低下してしまいます。
適度な運動は体に新鮮な酸素を送り込み、血液の循環を良くし、免疫力や抵抗力を高めます。また、自律神経の働きを活発にし、ストレス発散にもなりますので、アレルギー予防には良いことづくめです。
「病は気から」と言うけれど……
昔から「病は気から」といいますが、この言葉はアレルギー性疾患にもあてはまります。アレルギー症状の発症はストレスが引き金になっているケースが多いからです。ストレスが溜まると、神経のバランスがくずれて、内分泌や体の免疫システムに狂いが生じてしまいます。 ところで、心のもちようで病気が快方に向かうなど精神状態と免疫が関係しているという報告があります。ストレス発散には、規則正しい生活を送って生活にリズムをつけることと、「笑う」ことが良いといわれています。「笑う」という行為は、免疫力と関係するナチュラルキラー細胞を活性化させ、アレルギーの緩和に働きかけることが分っています。
寄生虫はアレルギー予防の友
花粉症は、いまや日本人の5人に1人が悩んでいるという国民病。その原因の一つに、寄生虫の減少を挙げている説があります。「寄生虫って悪いものなんじゃないの?」普通はそう思いますよね。ところが、実際に寄生虫感染の減少と呼応するかのように、日本社会にアレルギー患者が爆発的に増えているのです。一説には寄生虫の代わりに花粉などを敵だと判断して攻撃するのだと考えられています。寄生虫は困りものですが、寄生虫がいなくなったことでアレルギーが蔓延しているかもしれないなんて、何だか変な気分ですね。
また、寄生虫だけでなく、行き過ぎた衛生管理も問題です。最近では、なんでも「無菌」の状態です。免疫は、何度も菌やウイルスと触れ合うことで学習していきますので、子供の頃からバイキンを排除して清潔を追い求めた結果、免疫力が低下して新たな症状に悩まされている例が多く報告されてきています。行き過ぎた清潔志向が、肉体的にも精神的にもかえって現代人を精神的に貧弱にしてしまったということでしょうか。
長生きはお薬のおかげ?
日本はまぎれもなく世界有数の長寿国。医療技術の発展のお陰で、かつての難病や不治の病、死に至る病の多くが克服されています。ところが、その一方で、昔はあまり耳にしなかった「生活習慣病」「糖尿病」「アレルギー疾患」などの言葉が頻繁に聞こえてくるようになりましたよね。一体、日本人は今、健康なのでしょうか、それとも不健康なのでしょうか?
生活習慣病は、遺伝的な要素に加えて、食事や生活環境が原因となって起こる病気で、とくに働き盛りの中年層から増えていきます。さらに、ここに肥満が加わることで、動脈硬化を引き起したり、ホルモン内分泌や免疫系への影響を及ぼしたりします。日本人の3大死因といわれる、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」は年々増え続けていますが、これらの病気の発症を早めている原因は、ここにあるのではないでしょうか。
子供の慢性の病気は「アレルギー」、大人の場合は「生活習慣病」が代表的ですが、どちらにも共通していえるのは「遺伝的な要素がある」「治りにくい複雑な病気である」「食事、生活習慣環境に関係する」「増加傾向にある」ということです。子供のアレルギーは遺伝的な要素が多いといわれますが、この30年で遺伝要素が変化したとは考えられません。変わったのは、子供を取り巻く生活習慣や生活環境、そして食事です。これは、大人の生活習慣病、成人病でも同じことが考えられます。西洋医学は対症療法といって、その病気の部分部分に作用する医療方法。慢性疾患のように、体の中に漫然と広がって複雑になりすぎた病気には、どこに攻撃を加えていいのか分りません。その都度現れた症状を緩和する程度でしか対応できないのです。
では、子供の慢性疾患であるアレルギー、大人の生活習慣病、成人病から身を守るには、どうすれば良いのでしょう。まず、1つ目は原因となる「悪いもの」を遠ざけること。そのためには、食生活、生活環境を正すことが基本中の基本。同年代で、同じような食生活を送り、同じような生活環境の中で暮しているにもかかわらず、病気に「かかりやすい人」と「かかりにくい人」がいますよね。中には、どうしてそんなに元気なの?と言いたくなるほど丈夫な人もいます。これは、人が本来持っている自然治癒力、免疫が関係していると考えられます。ですから、2つ目はその人間本来が持つ力、免疫力を高めることが重要です。免疫力を高めて、体の中から病気を追い出し、病気を受け入れにくくすることで、多くの慢性疾患が緩和、ないしは克服できるはずです。病院通い、薬に頼る生活が、本当の意味での長生きといえるでしょうか?ストレス、食事、生活習慣に気をつけて、自分自身の免疫力を高め、70歳、80歳になっても元気に過ごし、本当の意味での長寿を楽しめるようになりたいですね。

