2009年06月03日

「わたしと薬」 (静岡県・15歳 女性)

 中学三年生の夏、ふと気がついた。私は、生きることが向いていない生き物だと。
 未来なんていらなかったし、夢も希望もかなぐり捨てた。今後の予定なんて真っ白だった。
 どうでもいい進路を親と先生に勝手に決められて、追い出されるように卒業していくのだ。私なんて、そんなものなんだ。現実と向き合うたびに、生きる気力が削られていった。
 何も出来ない自分がどうしようもない無意味なものに思えてきて、情けなくて、両手一杯に溜めた市販の風邪薬を一気に飲んだ。生きることから逃げ出したかった。
 しかし、それは致死量の半分程度だったらしく、結局私は何にもなれないまま生きていた。病院で飲んだアセチルシステインの、夏場の炎天下に放置された生卵のような味が、何だか自分によく似合っている気がした。

 後日、通院していた精神科でリスペリドンと抗てんかん剤を処方された。
 リスペリドンは小さくて丸くて、真っ白い。噛み砕いたら、しばらく舌がつるつるした。
 抗てんかん剤は、大きくて丸くて、真っ白い。糖衣錠だから、表面は甘い。
 それを飲み始めてから、私の世界は急速に色彩を取り戻した。何だか、明るかった。いつも見えていた暗闇は、いつの間にかなくなっていた。もう少し生きてもいいかも、と思えた。
 ただ白くて怖いだけだった現実とも、ほんの少しずつ向き合えるようになっていった。
 薬は、今まで聞いてきたどんな励ましよりも温かくて、正確で、私を支えてくれる。
 病院で縫合されるほど深く依存していた自傷からも、自然と遠ざかっていた。

 いつだって、私の世界は真っ白だ。
 単調で素っ気無くて、何もない。

 私は相変わらず何も出来ないただの迷惑製造機だけど、それなりに楽しく生きている。
 生き物の最低ラインを彷徨いて、ときどき希望とか夢とか見失って、でもそんなものなくてもいいやと諦めて、そしていつか何かを得るまで、真っ白のままでいいじゃないかと思う。
 真っ白。自分が飲んでいる薬とお揃いだ。それだけで、何だか頑張れる気がした。

 願わくはいつか、真っ白な現在が、色のある未来に至りますように。