肝がん、膵がん、食道がんに対し、地域の最後の砦として高度な手術を実践 【筑波大学附属病院】 (茨城県つくば市)

筑波大学附属病院 消化器外科
 
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嚥下機能を温存した食道がん手術を実践

食道がんや肝がん、膵がんは手術に技術を要することが知られている。筑波大学附属病院の消化器外科では、これらの中でも、特に他院ではなかなかできない程に難易度の高い症例を受け入れ、より正確かつ安全性の高い手術の提供を目的として、人員・設備を整えてきた。「大学病院の役割として、地域の最後の砦となることが挙げられます。そのためにレベルの高い治療の提供を目指してきました」と語る大河内信弘教授。
 
食道がん治療では、寺島秀夫教授を中心に、成績の向上だけでなく、合併症の防止も追求してきた。「ほとんどの施設では術後の嚥下機能が低下する前提で手術をしますが、当院ではそれを防ぐ工夫をしてきました」と寺島教授。その1つが、嚥下機能や発声機能を司る反回神経の温存だ。食道がんの転移を防ぐためには、経路になるリンパ節を切除する必要がある。リンパ節は反回神経の周囲に多いが、神経を温存しつつ切除する術式を確立したことで、患者は術後2日で飲み物を飲むことが可能。その術式に必要な手術の精度の高さがリンパ節郭清の精度にも反映されており、転移がない症例の5年生存率は9割を超えている。
 
加えて、胸部に生じた食道がんで、病変の切除後、残りの食道と胃を胸部でつないでいることも注目すべき点だ。一般的に行われる、頸部でつなぐ手法に比べて難易度は上がるが、嚥下機能が温存できてむせにくくなり、合併症の1つである誤嚥性肺炎の防止につながる。こうした、神経を温存し、胸部で食道と胃をつなぐ一連の手術は「自律神経温存高位胸腔内食道胃吻合術」と命名されており、学会でも発表を続けているという。
 

高い技術での腹腔鏡下手術も含め、適切な肝がん治療を

肝がん、膵がん、食道がんの5年生存率(%)

肝がん、膵がん、食道がんの5年生存率(%)


肝がんでは、手術やラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術といった従来法、さらには国内でまだ実施施設の少ない陽子線治療も含め、患者に適した治療を選択している。そのうち手術では、出血を起こしやすい臓器であるにもかかわらず、原則として輸血は不要で、術後の合併症の一つである胆汁の漏れも防いでいる。そうした手術の結果として、在院日数も平均12日程度と短い。
 
2015年からは、倉田昌直教授のもと、肝臓の腹腔鏡下手術も開始している。倉田教授は腹腔鏡下肝部分切除、外側区域切除などを日本で保険適用になる前から手がけ、現在まで多くの症例に携わってきた医師だ。その経験・技術により、2016年10月現在、同院では手術を原因とする死亡を一例も発生させていない。加えて、「腹腔鏡下手術によって、より出血量が減り、現在では200㍉リットル以下に抑えています」と、麻酔科医とも連携しながら、出血もさらに低減させているという。
 

集学的治療で挑む膵がん治療

難易度の高い手術に積極的に取り組む

難易度の高い手術に積極的に取り組む


膵がん治療の基盤は、最高難度の技術が求められる膵頭十二指腸切除術だ。「独自に術式を工夫し、出血、膵液漏等の合併症を抑えた結果、術後17日(中央値)で帰宅できる位の回復の早さが可能になりました。死亡率が全国平均2・8%に対し、12年間(2004年1月〜16年10月)の292例で0%を継続中と、高い安全性も目指しています」と小田竜也教授。また、手術だけで治らないことが多い症例で陽子線等の放射線や温熱治療、抗がん剤を組み合わせて生存率を向上してきた点も、全国で唯一といえる先進的な試みだ。16年には腹腔鏡下膵体尾部切除を開始。若い女性の良性膵腫瘍などで、ほぼ傷の目立たない手術が可能になった。
 
また、同院では、より成績を高めるため、新しい治療の研究にも取り組んでいる。例えば、血小板が肝臓の再生を促進する効果に着目し、血小板を増加させる飲み薬で肝硬変を併発した肝がんを治療するという、世界初の試みも開始した。現在は臨床試験であるため、患者の経済的負担もないという。こうした先進的な研究も含め、同院は地域を支えるために、高度な治療を実践し続けていく。

Information
〒305-8576 茨城県つくば市天久保2-1-1 
TEL.029-853-3900(代表)/029-853-3570(予約センター)

http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/ge-surg/

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