現在、歯科医療は大きな進歩を遂げており、口腔内に発生するさまざまな問題を解決する専門領域として確立している。歯を失わないためにむし歯や歯周病の予防および治療を行うほか、インプラント治療や優れた入れ歯により、歯を失っても本来の咀嚼機能に近づけることが可能となっている。また、歯並びや見た目を整える治療など、より患者のニーズに応える治療も徐々に普及してきている。
インプラント治療で天然歯のようなかみ心地
むし歯や歯周病などで歯を失うと、食事を楽しむことが難しくなるだけでなく、よくかめなくなることで全身の健康にも悪影響を及ぼすとされている。失った歯を補う手段の一つとして注目されているのが、人工歯根を顎の骨に埋め込み、それを土台にして人工歯を固定するインプラント治療だ。両隣の歯を支えにしたり、削って土台にしたりすることもないため、周りの健康な歯に対する影響も抑えられる。
治療は一般的に、カウンセリングや診断などを基に治療計画を立てることから始まる。診断の際にはレントゲン撮影などにより、顎の骨の量や質、形などを確認する。続いて、治療計画に従って人工歯根を埋め込む手術を行う。手術は歯肉を切り開いて顎の骨に穴を開け、人工歯根を埋め込んで歯肉を縫合するという流れで進む。必要であれば、手術前に歯周病の治療や修復不可能な歯の抜歯を行う場合もある。
人工歯根と骨が結合するまで、下顎は3~4カ月、上顎は半年ほどの期間を要するため、手術後は仮歯として取り外し式の入れ歯などを装着する。そして、人工歯根と骨が結合してから再度手術を行い、人工歯根に土台を取り付け、その上に最終的な人工歯を装着して治療が完了する。ただし治療後も、インプラント周囲炎などが原因で人工歯根が抜けてしまうこともあるため、定期的なメンテナンスが必要だ。こうした治療のほかに近年では、手術当日に仮歯を装着して食事ができるようにする即日インプラントや、4~6本のインプラントで義歯を支えるオールオン4・オールオン6といった治療も行われている。
インプラント治療は保険適用外のため、治療費はすべて自己負担になるが、定期的に正しい手入れを行えば半永久的に使うことができ、何度も通院して治療しなおす必要もないことから長期的に考えれば、それに見合った多くの利点が得られる治療であるといえるだろう。
しっかりと自分に合った入れ歯を選ぶ
インプラント治療は外科手術を伴うことから、治療に不安を感じる人や、心臓病などの全身疾患によって手術が難しい人、重い糖尿病で治療の予後が悪いと予測される人などには適さないケースもある。そうした場合は入れ歯でかみ合わせを維持することになる。入れ歯は天然歯と異なり、かむ力を咀嚼粘膜(歯ぐきの粘膜)で受け止めるが、本来、粘膜はかむ力を受け止める組織ではないため、合わない入れ歯を用いると、特定の部分だけに力が集中して痛みを感じてしまう。それを防ぐためにも、自分に合った入れ歯を選ぶことが大変重要となってくる。
入れ歯は、保険診療のものと自由診療のものに大別される。保険診療では保険の適用範囲から外れる材料や技術は利用できないが、その分費用を抑えられる。一方、自由診療では、費用は高くなるが義歯床や固定方法に多様な材料や技術が使用できる。例えば入れ歯の固定方法において、保険診療では金属のばねを残っている歯にかける方法しか選択できない。自由診療では磁石の使用や、残った歯に金属の内冠、入れ歯に金属の外冠を取り付け、茶筒にふたをするように両方を合わせて固定することなどが可能になる。
入れ歯を作製する際、歯科医師は口元が美しくなる位置や高さ、入れ歯を入れたときの表情や顔の形なども考慮する。優れた入れ歯を使って天然歯と同じように食事を楽しむためには、患者もきちんと歯科医師に相談し、共に治療に取り組んでいく姿勢を持つことも大切だ。
矯正治療で正しいかみ合わせを
歯並びが乱れていると見た目が悪いだけでなく、歯磨きが難しいことでむし歯や歯周病を発症させる可能性も高まる。さらにかみ合わせにも悪影響を及ぼし、頭痛や肩こりなど全身にも悪影響が生じさせるため、適切な治療が求められる。矯正治療は、上下の顎の位置と働きを考えながら、歯並びやかみ合わせを理想的な状態に導いていく。一般的な治療は、歯の1本1本に小さな金具を取り付け、そこに通した形状記憶合金のワイヤーの力で歯を少しずつ動かしていく。
通常の矯正装置は歯の表側にあり、治療中であることが他人からわかってしまうが、最近では、矯正装置をわかりにくいように装着する治療法も見られるようになった。そのうちの一つが、歯の裏側に金具やワイヤーを取り付け、外から矯正装置が見えないようにする裏側矯正(舌側矯正)だ。矯正装置が見えなくなることで、社会生活上において受ける精神的なストレスからも解放される。
ほかに、ワイヤーを使わないワイヤーレス矯正(マウスピース矯正)といわれるものもある。マウスピースの形をした透明なプラスチック製の装置を歯列にかぶせて矯正治療を行うもので、治療中であることが他人からわかりにくい。さらに、食事や歯磨きなどの際に取り外せるので、口内も清潔に保てる。
矯正治療は、それぞれの治療法にメリットとデメリット、適応症例の違いがあるほか、費用も治療次第で多岐にわたる。そのため、歯並びやかみ合わせが気になったら矯正を専門に行う歯科医師を受診し、治療について詳しく話を聞くのがよいだろう。
白い歯を手に入れるホワイトニング
歯は、加齢による黄ばみ、コーヒーやたばこなどの嗜好品、食品に含まれる着色物質によって変色が進む。コーヒーやたばこなどの着色物質による変色は、PMTCを行うことである程度までは改善が可能だ。しかし、エナメル質の奥深くまで着色物質が沈着している場合や、加齢によって黄ばんだ場合などはPMTCでは改善できず、ホワイトニングと呼ばれる治療が必要になる。
ホワイトニングは歯科医院で行われるオフィスホワイトニングと、患者自身が自宅で行うホームホワイトニングに分けられる。ホームホワイトニングは薬剤のみを用いた治療で、専用のマウスピースを作ってその中に薬剤を入れ、毎日一定の時間装着する。効果が現れるまでに日数がかかるが、元の色に戻りにくい。
一方、オフィスホワイトニングは、プラズマライトなどの特殊な光も薬剤に併せて使用する。薬剤を塗った上で、光を当てて歯の色素を分解することにより、短期間で歯を白くすることが可能になるが、ホームホワイトニングに比べて元の色に戻りやすいのが難点だ。また、両方の治療を併用するコンビネーションホワイトニングで、より効果を高めることもできる。
セラミック治療で口元から美しく
歯の外見を整える手段として、ホワイトニング以外に、セラミックを歯に張り付けたり、かぶせたりする治療がある。セラミックは見た目が美しく、ほとんど磨耗しない素材で、人体への親和性が高いために歯ぐきを痛める心配が少ない。
代表的な治療には歯の表面を0.5mm程度削って薄いつけ歯を貼り付けるラミネートベニアがある。神経のない歯など、ホワイトニングでは白くするのがむずかしい歯にも行えるほか、歯並びのわずかなずれも補正が可能。大きい変形などのある歯は、表面全体を削ってクラウン(冠、かぶせもの)をかぶせるセラミッククラウンで修復できる。その一種のオールセラミッククラウンは、土台や裏側に金属を一切使わないため、非常に透明感があり、天然の歯とほとんど見分けがつかない。
専門の歯科医師とかかりつけ医
質の高い歯科治療を適切に受けるためには、専門の歯科医師(専門医)を見つけるのが望ましいといえる。自分の症状にきちんと合った治療を専門とする歯科医師なら、さまざまな疑問にも詳しく説明してもらえるため、信頼性も高まるだろう。
さらに、長期的に口腔内の健康を維持していくためには、自分に合った歯科医師をかかりつけ医にすることが大切だ。定期的な健診により自らの歯を健康に保ち、もし何らかの異常があっても、早めに適切な治療を受けるようにしたい。
【文/海保寛之】







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