歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)とは
歯科においては、この20年余りの間にインプラントやセラミック、また歯への接着や歯周病の治療法など新しい技術や材料が開発され、昔に比べ格段と歯を治療して残すことができるようになってきました。同様に、できるだけ歯を削らずに、かつ患者さんの審美面での要求に応えられるような歯科治療も進歩してきました。たとえば、薄いセラミックを歯に接着して張り付けるラミネートベニア法では歯の表面を約0.5mm削るだけで治療が可能となっています。また、歯に接着する歯と同じ色のセメントの開発により、歯科治療が可能となりました。しかし、審美的治療の要となるセメントは色が歯に似ていて透明感があるものの、あふれた部分は治療後の変色の原因になるため、精密な治療が要求されることがわかってきました。
実はライトをつけても口の中は暗く、さらに術者の目から患者さんの歯までは40cmても肉眼では限界があります。
そこで口の中を約20倍まで拡大できる”歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)”を用いて治療する顕微鏡歯科という新しい歯科治療が広がってきました。患者さんの口の中を直接見るのではなく、マイクロスコープをのぞきながら診療を行う方法です。さらに単に拡大して見えるだけでなく、ハロゲンランプなどの光源から光ファイバーを通じて非常に明るいライトが治療部位を照らすため、暗い口の中での治療には適しているといえるでしょう。
今後ますます広がる精密歯科治療
世界的にみても歯科にマイクロスコープが用いられるようになったのは約15年前からのことですが、わが国でもほぼ時を同じくして使われてきました。審美的治療の土台となる歯の根の治療から、歯とかぶせ物をぴったりと合わせる技術、そしてしっかりとかぶせ物を歯に付ける接着の技術まで、マイクロスコープを用いた診療はお口の中をきれいに治す審美的治療のレベルを格段と向上させます。
ただし、歯科医師にとって使いこなすまでに特別なトレーニングが必要である、機器が数百万円する、マイクロスコープ使用の有無によって保険点数は変わらないなどの理由で、まだどこの歯科医院でも行われている治療法とはなっていません。全国の歯科医院でのマイクロスコープの普及率は数%程度といわれています。しかし、日本顕微鏡歯科学会の会員数は毎年増え続けており、多くの歯科医師がその重要性に着目しはじめています。今後、マイクロスコープを使いこなした、より正確な治療が広く提供される時代がきっとやってくると期待されています。
木ノ本 喜史(きのもと よしふみ)
日本顕微鏡歯科学会 理事







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