歯科における歯科麻酔専門医の役割
通常、子どもの歯(乳歯)は20本、大人の歯(永久歯)は28から32本です。口腔という狭いところで、上顎と下顎に半数ずつ生えており、それぞれの歯に痛みの神経の束が入っているのです。もし髪の毛に痛みの神経が入っていたとしたら、今のように気軽に床屋さんへは行けませんね。このように神経を介し、脳にある痛みを感じる場所に伝わる感覚と、見る、聞く、臭う、味わう、そして触ることでの情報による不安感、恐怖感などのいわゆる心理的な反応が、とりわけ歯科治療では強いようです。医科の病気は場合によっては生命に関わるという印象からか、不安感や恐怖心によって受診をやめるケースは歯科に比べてはるかに少ないことは、皆さんも実感していると思います。
高齢化の進む昨今では、医科は生命の医療、歯科は生活の医療と呼ばれています。生活の質(QOL)を高く維持し、人生を長く楽しむためのサポートの役割を歯科は担っています。そこで、質の高い歯科医療を提供するためには、「痛い・怖い」という悪い印象を取り除くことが重要です。これはすべての歯科医師に求められる能力ですが、それを教育カリキュラムとして体系付けているのが「歯科麻酔学」です。その中では、全身麻酔、局所麻酔、精神鎮静法、疼痛治療などが教えられています。これらに関した研究も数多く発表され、臨床応用されています。
このような分野に興味のある人たちが作り上げた学会が日本歯科麻酔学会です。誕生から36年以上の歴史があり、現在会員数は2405名です。本学会は、2002年の厚生労働省認定の広告ができる専門医制度の開始に合わせて、歯科麻酔専門医制度を立ち上げ、2006年3月24日付で広告が認められる専門医資格を持つ団体となりました。現在、232名の歯科麻酔専門医を認定し、当学会HP上で公表していますのでご確認ください。(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdsa/)
歯科治療に不安感、恐怖心があり、歯科受診を避けている方は、ぜひ歯科麻酔専門医に相談してください。また、高齢者においては内科的な病気をお持ちの方が多いと思います。医科の担当医から歯科治療に関して何らかの注意を受けている方は、まず歯科麻酔専門医に相談されることをおすすめします。そしてかかりつけの歯科の先生との連携で「不安や負担の少ない歯科治療」を受けてください。歯科麻酔専門医は、歯科治療における心と体のサポーターです。
住友 雅人(すみとも まさと)
日本歯科麻酔学会 理事長
日本歯科大学 生命歯学部長







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