産科と婦人科に分かれる産婦人科の役割
産婦人科は、妊娠や分娩を対象とし、妊娠中の女性の経過や胎児の状態を診て、場合によっては治療を行う「産科」と、妊娠以外の女性特有の子宮や卵巣などの病気を診察・治療する「婦人科」に分かれます。
産婦人科医は、出産をはじめとする女性の一生に深くかかわっていきます。出産や婦人病の治療だけでなく、生理痛、月経異常、不正出血、おりものの異常、性器や乳房の異常、妊娠の悩みなど、思春期から更年期の女性のさまざまな悩みに応えていかなければなりません。
ただ、産婦人科医の減少が社会問題になっています。出生率がわずかながらも上向き、少子化傾向に歯止めがかかる一方で、産婦人科医や産む場所の不足の問題がクローズアップされています。
厚生労働省が2年に1度行う「医師・歯科医師・薬剤師調査」よると、1986年から2006年の間に、医師総数は約18万人から26万人と約44%増加していますが、産婦人科医は1万1978人から9919人と約17%の減少となっています。産科と婦人科の内訳では、お産を扱わない婦人科に衣替えする医師が増えているのが現状です。
日本産科婦人科学会認定の産婦人科専門医
少子化社会の傾向を抑えるためにも、産婦人科医の確保が急務になっています。こうした中、日本産科婦人科学会では、産婦人科を専攻する若手医師の確保を目指すと共に、産婦人科専門医の育成を進めています。
同学会において、産婦人科専門医制度が発足したのは1987年。この制度は産婦人科領域における広い知識、錬磨された技能と高い倫理性を備えた産婦人科医師を養成し、生涯にわたる研修を推進することにより、産婦人科医療の水準を高めて、国民の福祉に貢献することを目的としたものです。
産婦人科専門医は、学会が定めた卒後研修カリキュラムに沿って学会指定の卒後研修指導施設で一定期間以上の臨床研修を修め、資格試験に合格した医師です。
専門的な知識と技術を持ち 5年ごとに更新が必要
産婦人科専門医は、産科における妊娠、分娩、産褥の管理をする能力とともに、卵巣、卵管、子宮、膣、外陰部、その他の骨盤内婦人科疾患など、産婦人科領域の病気はもちろん、ホルモン・内分泌、不妊症、婦人科腫瘍、感染症などについて、専門的な知識と診療技術を持っています。
また、これらの領域に関して適切に対応する診療を行い、必要に応じて他の専門医への転送の判断も的確に行う能力を備えた医師でもあります。
具体的な認定は2次審査まであり、マークシート方式の筆記試験、試験官による面接試験などにより評価されます。産婦人科専門医の資格取得には、そうした厳しい審査に合格する必要がありますが、合格してもその有効期間は5年間に限られ、定期的に更新しなければなりません。
資格更新には、学会が主催する学術集会および研修会に出席して、有効期間中に150単位以上を取得し、その上で研修内容報告書などの申請書類を提出して再び審査を受けます。産婦人科専門医は、絶えず向上心をもって研鑚を積み重ねていく必要があるわけです。
周産期医療の充実で母子を手助けする
産婦人科医は、妊娠22週から生後7日までの周産期を通じて、お母さんや生まれてくる子どもを手助けします。出産前には、定期的な検診を行い、胎児の成長と妊婦の健康をチェックします。
たとえば超音波検査では、胎児の発育状況が画面で一目で分かり、体内の骨や筋肉、羊水、尿などの映像をもとに、疾患が見つかれば早期治療に臨みます。
産婦人科医が目指す「安心」の医療の提供
産婦人科医は、女性の思春期から性成熟期、そして閉経前後、老年期に至るまで、人生で起こるさまざまな病気や心の変化と向き合っています。とくに妊娠・出産は、新たな生命を迎え、誕生の喜びを一緒に享受できるときでもあるといえるでしょう。
産婦人科医が目指すものは、お母さんが十分な信頼のもとで出産でき、元気な赤ちゃんを生んで、母子共に健康であるという「安心」の医療の提供です。妊娠中はもちろん、少しでも体調不良を感じたら、早めに産婦人科医のいる病院やクリニックの受診をおすすめします。
合計特殊出生率と出生数 2008年は前年より増加
厚生労働省が発表した2008年の人口動態統計によると、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの平均数の推計値)は1.37と、前年より0.03ポイント改善し、過去最低を記録した05年の1.26から3年連続で上昇しました。08年の出生数も、109万1150人と、前年より1332人増えています。
ただ、厚生労働省では、08年はうるう年で、1日増えたことが主な理由と見ています。通常は1日で3000人前後の出生数があるといい、うるう年でなければ微減になる計算です。
羊水過少・過多症や妊娠中毒症
妊娠中の病気では、羊水量が100mlと少なく、胎児の罹病率や死亡率の上昇に関係する羊水過少症や、羊水の量が800mlを超え、早産や逆子などの可能性が高くなる羊水過多症が挙げられます。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)は、主に妊娠後半期から現れる妊婦特有の病気で、悪化すると胎盤早期剥離を起こして早産や胎児死亡の原因となります。子癇といって、妊婦が突然けいれんを起こし、昏睡状態に陥って、母体の生命をおびやかす場合もあります。
NICUの病院が増えて早産に対応
妊娠22週から36週までの間に赤ちゃんが生まれてしまうことを早産といいます。この時期の赤ちゃんは、子宮外で十分に生活できるほど育っていないため、最近は新生児集中治療室(NICU)を備えた病院が増え、早産の赤ちゃんが元気に育つことも多くなっています。
また、文部科学省では、2009年度から4年間で、現在9つの国立大病院で新生児集中治療室がない状況を解消し、全国立大病院の半数に当たる21病院では、周産期医療の関係病床数(平均11.4床)を各20床に増やす整備計画を公表しています。
【文/秋山 晴康】







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