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特集記事: 2009年9月30日 [ 「がんで困ったときに開く本」 2009年9月30日 掲載 ]

低襲の少ない治療で高齢者にもやさしい HIFUで前立腺がんを切らずに治療
堀江 重郎

【特別寄稿】

帝京大学医学部附属病院
泌尿器科 教授

堀江 重郎 (ほりえ しげお)

***

増加する前立腺がんをPSA検査で発見する

前立腺がんは、日本では欧米と比較して頻度の少ないがんと考えられてきましたが、社会の高齢化や食事の欧米化に伴い、現在日本で最も増えているがんとなりました。PSA(前立腺特異抗原)検査は、非常に優れた腫瘍マーカーで、米国では50歳以上の男性が一度は受けているほどの検査です。米国に比べると受診率はまだまだですが、日本でも最近になってPSA検査が普及し始め、それが前立腺がんの発見が増えている一因になっていると考えられます。

前立腺がんの治療は、前立腺を丸ごと摘出する外科手術が基本ですが、心臓や呼吸機能などの持病があり、手術への危険が大きいときは放射線治療が行われます。放射線治療には、体外から前立腺または骨盤全体に放射線を照射する方法と、前立腺に放射線物質を埋め込む小線源治療の2種類があります。

手術や放射線よりも侵襲の少ないがん治療

最近注目されているHIFU(高密度焦点式超音波治療法)は、超音波を前立腺へと収束させて高い熱を起こし、前立腺組織を凝固壊死させるというものです。治療が1日で終わり、短期間の入院で済むことと、体に針を刺す治療ではないので、抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬)を服用している脳梗塞や心臓病の方でも治療を行えるというメリットがあります。通常の手術や体に針を刺す小線源治療では、出血が止まりにくいので抗凝固剤の服用を中止しなければなりません。HIFUは非観血的で侵襲性が低く、禁忌の合併症が少ない治療といえます。

極端に悪性度の高いがんには勧められませんが、がんが前立腺の中にとどまっている限りはHIFUの治療対象として考えられます。基本的には、やはり手術が適さない方や高齢の方が中心になります。治療効果は放射線治療とほぼ同等で、手術が可能でしたら手術のほうが的確ですが、手術をして再発するようなら、次にHIFUを選択することもできます。

HIFUを応用した次世代の前立腺がん治療

前立腺がんの次世代の治療として話題になっているのが、フォーカルアブレーションという、HIFUによる前立腺の温存治療です。がんの位置が一部に限定される症例では、超音波を前立腺全体に照射するのではなく、部分的に照射することで、前立腺の正常組織を温存できる可能性があります。そのためにはがんの位置を正確に把握している必要がありますが、最近ではMRSという画像診断によって、その位置がある程度正確にわかるようになってきました。今後はHIFUでピンポイントに前立腺がんを治療できる可能性も出てくるでしょう。PSA検査を通じて、前立腺の一部にがんが発見されることもあります。男性は50歳を過ぎれば、一度はPSA検査を受けてみることをお勧めします。

堀江 重郎(ほりえ しげお)

帝京大学医学部附属病院
泌尿器科 教授

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