死亡者の多い肺がんに対して適切な治療を提供
呼吸器外科は、縦隔洞、胸壁、胸膜、横隔膜など、主に呼吸に関与する臓器の治療に携わっている診療科です。対象となる疾患は、肺がんや転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸膜・胸壁腫瘍、気胸などの疾患および肋骨骨折や横隔膜破裂などの外傷とさまざまですが、その中でも特に重要な疾患は肺がんです。肺がんは日本において部位別に見たがんの死亡者数がもっとも多く、その数は毎年増え続けています。
従来、肺がんの手術は、皮膚を30cmほど切開して筋肉を切断、さらに上下の肋骨の間を切り開いて胸の中がよく見えるようにした上で、病変部を含む肺を切除していました。しかし、近年では早期の肺がんに対しては、がんのある部分だけを切除して(部分切除や区域切除)肺機能を温存する縮小手術も行われるようになりました。
さらに、負担の少ない手技である胸腔鏡手術も行われています。胸腔鏡手術は、先端に小型のカメラを装着した棒状の機器を体内に通して行う手術です。胸部に4cmほどの小さな穴を数カ所開け、胸腔鏡や操作用鉗子、切除用器械などを通して肺を切除します。手術創が30cmにもおよんだ従来の開胸法に比べると、大幅に大きさが抑えられるため、術後の痛みや肺機能の低下が少なくなります。
進行肺がんの場合は、こうした手術だけではなく、薬物治療や放射線治療などを組み合わせて治療していきます。
疾患や外傷など多くの治療に携わる
呼吸器外科では、肺がんのほかにも、気胸や縦隔腫瘍など多くの疾患の治療に携わります。気胸は、胸腔内で気体が肺を圧迫し、肺が外気を取り込めなくなった状態で、胸痛を伴う突発性の息切れなどを引き起こすのが主な症状です。症状が軽い場合は、無理な姿勢や運動をせず、無理な呼吸をしないで安静にすることで自然に収まりますが、呼吸を妨げるほど大きい場合は、胸壁を切開して空気が通るチューブを挿入したり、胸腔鏡手術で病変を切除したりします。縦隔腫瘍は、左右の肺に挟まれた場所にできる胸腺腫や奇形腫、神経腫瘍などを指します。縦隔には心臓や大血管、気管などの重要な臓器があるため、手術での切除が原則になります。一部の腫瘍は胸腔鏡による摘出も可能です。
また、胸部外傷に対する手術も呼吸器外科の領域に含まれます。損傷の状態により処置が異なりますが、基本的に呼吸、出血、疼痛、感染を管理して治療を進め、重症の場合は緊急手術を行うこともあります。
高い知識と技術を有する呼吸器外科専門医
日本呼吸器外科学会と日本胸部外科学会で構成する呼吸器外科専門医合同委員会では、このような呼吸器外科に関する十分な専門的知識と技量を持つ医師を呼吸器外科専門医として認定しています。
呼吸器外科専門医の資格を取得するためには、厳しい審査を受けなければなりません。日本外科学会の外科専門医もしくは認定医の資格を習得した上で、認定修練施設において3年以上の修練を積み、同時に定められた数の手術に携わる必要があります。さらに、講習会の受講や学会参加・発表などの活動も求められます。こうして要件を満たした後、高度の専門的知識を要求される試験に合格することで、専門医として認定されます。
こうした厳しい認定基準により、呼吸器外科専門医は、長期間にわたる研修や多くの手術経験、高度の学術的研鑽を積んでおり、肺がんを代表とする多くの疾患に対し、質の高い技術と専門性を生かした治療を行っています。
【文/鈴木 健太】







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