• 東京都

国立病院機構

東京病院呼吸器センター

わが国の呼吸器疾患治療をリードする
緑豊かな一大臨床・研究拠点

わが国の呼吸器疾患診療をリードする東京病院(東京・清瀬市)。国立の医療機関とあって、地域に信頼される病院でありつつ、呼吸器疾患診療に重点的に取り組み、東日本における一大臨床・研究拠点を形成している。

喀血、肺がん、抗酸菌感染症などあらゆる呼吸器疾患に対応

「呼吸器なら東の東京病院」といわれるほど呼吸器疾患治療には定評がある。

「東京病院には大きく2つの使命があります。ひとつは呼吸器。知名度は高く、地域医療機関からの紹介も目立ちます。多摩地域だけでなく、東京23区、埼玉・神奈川・静岡県などからも来院されます」
と、かじとり役を務める松井弘稔院長は力を込める。2005年の着任。副院長などを経て、2022年4月から院長を務める。

病院の歴史は長い。1931年開設の国立療養所清瀬病院と1939年開設の国立東京療養所が1962年に統合され、国立療養所東京病院としてスタート。2004年、国立病院機構へ移行した。

前身の両病院とも結核治療の拠点で、その伝統を継ぎ、肺結核を含めた呼吸器疾患治療の基幹施設として歴史を刻んできた。

呼吸器センターを設置したのは2010年10月。内科・外科一体型の対応が必要な患者が多かったからだ。

「『肺に影があるが、何の病気かわからない。呼吸器内科・外科、どちらを受診すればいいのか』という患者さんのニーズに応えた部門が必要と考えました。ここで、肺がんの診断がつけば外科や放射線科、最終的には緩和ケア科といった、その患者さんに最適な診療科へ橋渡しできます。やはり当院の強み・特色を全面に押し出す必要がある。そこで呼吸器センターを設立し、『呼吸器に強い病院』という看板を掲げました」(松井院長)

もうひとつの使命は地域医療。北多摩地域の基幹病院として消化器内科・外科、循環器内科、脳神経内科、泌尿器科、整形外科、リハビリテーション科、眼科など多数の診療科を置き、地域医療に貢献している。

センターの特色活かした診療科を超えた連携も魅力

呼吸器センターは傘下に複数の部門を抱える。

「あらゆる呼吸器疾患に対して専門的で確実な医療を提供しています。専門性を高めるため、疾患別に腫瘍、感染症、びまん性肺疾患、COPD、肺循環喀血の5つの部門を置いているほか、手術が必要なケースもありますから、呼吸器外科にも加わってもらい、6部門体制を整えました」

と守尾嘉晃呼吸器センター長(肺循環喀血センター長兼任)は話す。呼吸器センターには各分野の専門医、スペシャリストが集結。常勤医師23人、非常勤医師11人の計35人体制という、分厚い布陣で診療にあたっている。

複数の診療科との連携も大きな魅力だ。呼吸器内科を軸に呼吸器外科、アレルギー科、放射線診療センター、リハビリ科、緩和ケア内科などとの協力体制を構築し、患者にとって最良と思われる医療を提供している。

腫瘍部門は主に肺がんを対象にしている。

「強みは肺合併症のある患者さんに対して当病院の内科、外科、放射線科の協力による肺がん治療だけでなく、肺合併症への内科治療もできる、例えば肺気腫、抗酸菌症、間質性肺炎など持っている患者さんにも対応できる点が呼吸センター肺がん部門の大きなメリットですね。がん専門病院では肺合併症を管理しながら肺がん治療をしていくことが難しい場合もあると思いますが、当院には呼吸器内科の病床がたくさんあり、肺合併症の治療や管理をしながら肺がん治療をしていくことも可能です。多摩地域に限らず、都心や近県の肺合併症をお持ちの肺がん患者さんを歓迎しています」と田村厚久副院長は話す。

外科や理学療法室、栄養室などが一体となった総合診療を実践

感染症部門は微生物による感染症を対象としている。呼吸器内科領域では原因微生物はウイルス、一般的な細菌、抗酸菌、真菌に分けられる。

「ウイルスの大半は外来診療で対応が可能です。一般細菌は抗菌薬が決まっており、中等症までは、どこの医療機関でも治療できます。ただ重症の細菌感染症と抗酸菌、真菌の診療は医師に一定以上の知識・技量がないと難しい。抗酸菌は非結核性抗酸菌と結核に分かれます。政策医療である結核は、法律で定められた施設でなければ入院治療ができません。当院は、病院設立以来結核の入院施設を有し、外来診療も習熟しているので、診療ガイドラインに沿った適切な診療ができます」

と地域医療連携部長・副臨床研究部長の佐々木結花医師は語る。また、肺非結核性抗酸菌症は近年、患者数が急増。「治療法が確立されていない」「薬の開発が遅れている」「菌の生態がはっきりしない」という難治疾患だが、同部門は最新のガイドラインの治療法を熟知し診療を行いつつ、臨床的な研究も行っている。また、センターの強みを生かし、外科や理学療法室、栄養室などが一体となった総合診療を実践し、患者に寄り添った診療を心掛けていると話す。

「真菌症は肺がん、COPD、間質性肺炎、非結核性抗酸菌症など、さまざまな疾患に共感染する微生物で、日本では治療に関する知見を持っている医師は本当に少ない。当院は以前から真菌に取り組んでおり、病理学的研究も積み重ねているので、真菌症を疑われた患者さんたちも安心して治療を受けることができます」(佐々木医師)

びまん性肺疾患は肺全体が広範囲に冒される病気で、炎症性疾患、感染症、腫瘍性疾患など多様な疾患を含んでおり、診断をつけるのが難しいとされている。

「びまん性肺疾患部門ではレントゲン、 CTなどをもとに多数の医師が参加し、意見交換しながら、画像診断を進めます。間質性肺炎が疑われる場合、肺の内視鏡・気管支鏡検査で標本をとって病理の医師に診断してもらいます。呼吸器専門の病理の医師を抱えているのも当センターの大きな特色。ただ、気管支鏡で得られる標本の大きさには限界があり、なかなか診断できないケースもあります。そのときは外科にお願いして、胸腔鏡下の肺生検で診断を進めます。診断後、TBLB (経気管支肺生検)カンファレンスを行い、外科、病理、呼吸器、放射線科の医師が集まり、もういちど検証する機会を持つ試みもしています」

と守尾医師。間質性肺炎は難治性で、特効薬はない。できるだけ生活の質を保てるような治療を行っている。呼吸器担当の理学療法士がいるのも大きな強み。肺の機能が落ちた状態で、どのように生活していくかをサポートする体制も整っている。

肺循環・喀血センターは喀血治療の「最後の砦」

COPDとは肺気腫や慢性気管支炎も含む慢性閉塞性肺疾患のこと。 気管支の炎症や肺疾患で肺機能が低下し、長く続く息切れ、せき、たんが特徴で、生活に支障をきたすケースも少なくない。「COPDは禁煙が一番の特効薬で、予防にもなります。検査、治療で重要なのは多職種連携。治療は薬物療法とリハビリテーションが中心です。痩せている人が多いので、栄養士による食事指導を行ったり、息切れが強くて階段を登れない人や掃除・洗濯などの家事ができない人に適切なリハビリテーションを指導するなど、生活の質をあげることに注力しています」

と松井院長は力を込める。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療にも力を入れている。無呼吸症候群をほうっておくと、いろいろな病気を引き起こすことが判明、テレビなどでも取り上げられることが多くなった。近年では、居眠り運転防止のため、鉄道会社やバス会社などで運転士のスクリーニング検査を実施するところも増加している。

「『無呼吸も呼吸器科で』と当院を訪れる患者さんも増え、2022年8月現在、約450人にCPAP(睡眠中の気道を拡げる機器)治療を施しています」(松井院長)

肺循環・喀血センターは最も新しいセンター。東京病院は昔から喀血の治療成績はずば抜けている。がんや感染症の患者に発生しやすい症状で、強い炎症が起こると血管が組織的に弱くなり、その血管が破綻、それによって喀血する。

「喀血は、そのときに対応しないと喀血死にいたることもあります。緊急時には患者さんの呼吸を守るために人工呼吸器を装着して気道を確保しつつ、喀血の治療を進めることもあります。もちろん、原因となる疾患である感染症・がんの治療も並行して行います。疾患の治療と患部の治療、両方できるのが喀血センターの強みです」(守尾医師)

内科医がカテーテル治療を行っていることも大きな特色。破綻した血管を内科医が自分で閉塞させることで、迅速な治療を実現した。

さらに、同センターは肺循環障害にも診療分野を広げたのが大きな特徴だ。肺循環障害は肺高血圧症や肺血栓塞栓症などが代表的な疾患。初期症状としては息切れが多い。息切れは感染症、COPD、喘息、他の呼吸器・肺疾患でも症状として現れるが、息切れの患者の中には肺高血圧症や肺血栓塞栓症などが潜んでいることがある。肺循環障害を診療分野として掲げていない医療機関では、なかなかカバーできない。

  • 12月開設の緩和ケア病棟

全国の炎症性肺疾患手術のうち約5%を東京病院が実施

ただし、すべてのケースが内科医だけで対応できるわけではない。同センターの場合、呼吸器外科の常勤医3名を抱え、必要なときは(主に肺がんと炎症性肺疾患)外科治療も行える。特に炎症性肺疾患の手術には定評があり、日本で行われている同手術の約5%を同センターが引き受けている。

「炎症性肺疾患は文字通り炎症ですから、薬物療法が基本です。ただ薬物療法だけでは、どうしても治らない場合、壊れた肺の一部を切除すれば菌を除去できるので、手術することもあります」

と話すのは呼吸器センター外科医長の深見武史医師。肺がんの「最後の砦」的な役割を果たす。他の医療機関では手に負えない患者が紹介されて来院することも多い。

「以前、肺を手術したが、そことは別の場所に第2、第3がんが発生したケースでは、初回の手術で胸の中に癒着が起こっており、残っている呼吸機能も低下しているので、再手術するのは大変です」(深見医師)

肺がんを含むがん患者には緩和医療という分野も必要になってくる。2022年12月には待望の緩和ケア病棟(30床)がオープンする。患者にとって大きな魅力は窓から緑豊かな景観を見ることができること。患者が車椅子で庭を逍遥できるよう、調整を進めている。

東京病院 院長

松井弘稔

呼吸器センター長
(肺循環喀血センター長兼任) 

守尾嘉晃

東京病院 副院長

田村厚久

地域医療連携部長・副臨床研究部長 

佐々木結花

呼吸器センター外科医長 

深見武史

Information

国立病院機構

東京病院呼吸器センター

ホームページ

独立行政法人国立病院機構
東京病院

〒204-8585
東京都清瀬市竹丘3丁目1-1

TEL 042-491-2111
FAX 042-494-2168


外来診療予約センター
TEL 042-491-2181
平日8:30~15:00