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一宮西病院

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呼吸器内科・外科の密な連携で
増加を続ける肺がんに立ち向かう

病院全体で協働し肺がん診療を実践

 多くの診療科と高度な医療技術を有する一宮西病院。力を入れている分野のひとつが、呼吸器内科・外科が密に連携した肺がん診療だ。受診者数は年々増加を続け、2022年は新規肺がん入院患者数で407名※を数えた。

「受診されるのは、呼吸器症状がある方、先に脳や骨による症状が出現して画像上肺がんが疑われる方、検診画像で肺がんが疑われる方などです。呼吸器内科では気管支鏡検査を行い、確定診断をつけています。また、PET検査やMRI検査で、がんの全身への広がりを確かめ、ステージを決定します」と呼吸器内科部長を務める竹下正文副院長は話す。

  • 気管支鏡検査によって肺がんの確定診断や遺伝子変異検査を実施

再発防止と負担軽減を両立した手術を目指す

 ステージⅠ~Ⅱでは手術を選択できる症例が多い。手術では「どのくらい肺を切除するか」「どのような切り方で手術を行うか」を検討する。

「肺を切除すると肺機能の低下につながりますので、術後の呼吸に影響が出かねません。病状や全身状態などを総合的に考慮し、どのくらい切るかを判断します」と呼吸器外科部長の大亀剛医師は説明する。

 また、がんが広がっていきやすい領域のリンパ節を精密に取り切る(リンパ節郭清)ことで、再発防止を目指している。

 切り方は開胸と胸腔鏡があり、同院では年間121件※の肺がん手術のうち約9割を、3〜4カ所の小切開から手術器具を挿入する胸腔鏡手術(VATS)で行っている。

「VATSでは高画質な4Kモニターで、深部の構造や細かい血管を鮮明に確認することができます。開胸手術の場合も拡大鏡を装着することで、細部まで確認できる視野を確保しています」(大亀医師)

 その結果、出血量を抑えた手術が可能となり、患者の負担軽減につながっている。

  • 肺がんの手術の約9割を低侵襲な胸腔鏡手術(VATS)で実施

薬物療法の進歩が5年生存率延伸に寄与

 ステージⅢでは手術適応があるのか、それとも薬物治療や放射線治療を選択するのか、検討が重要になる。そこで呼吸器内科・外科、放射線治療科で週に一度カンファレンスを行い、患者に適した治療方針を決定している。

 薬物療法では、従来から使われてきた抗がん剤のみならず、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬という選択肢がある。気管支鏡検査で採取した検体に遺伝子変異検査を行うことで、有効と考えられる治療薬を見つけ出す。

「この20年で薬物療法は大きく進歩し、肺がんの5年生存率も大きく向上しました。その分、薬の組み合わせは複雑になり医師に知識が求められますが、患者さんに合わせたオーダーメードな治療を提供できるようになっています」と竹下副院長は力を込める。

 チーム医療体制も充実。放射線治療科は患部へピンポイントに放射線をあてる定位照射やVMAT(強度変調回転照射)のような理想的な線量分布をつくる根治的治療や、緩和治療にも柔軟に対応する。また病院全体でおよそ150名のリハビリスタッフを抱え、うち22名が呼吸器内科病棟の専属で、がんリハを実施している。

「治療を継続するためには、患者さんのADL(日常生活動作)が重要になってきます。そこで有酸素運動や筋力強化運動を実施し、ADL維持を目指します」(竹下副院長)

 肺がん早期発見のため、啓蒙活動にも力を入れる。年に一回の検診を呼びかけ、市民公開講座も開催。尾張西部地域の住民の健康を守るため、さらなる活躍を期している。

※ 2022年1月~12月

取材・文/高橋美森

副院長・呼吸器内科部長

竹下 正文

たけした・まさふみ●2003年、九州大学医学部卒業。九州大学病院、北九州市立医療センター呼吸器内科部長を経て、2018年より同院。日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医。

呼吸器外科部長

大亀 剛

おおき・たかし●2009年、岡山大学医学部卒業。公立学校共済組合中国中央病院、岡山大学病院を経て、2017年より同院。日本外科学会認定外科専門医、呼吸器外科専門医合同委員会認定呼吸器外科専門医。

医療新聞社
編集部記者の目

 呼吸器内科部長を務める竹下副院長も呼吸器外科部長を務める大亀医師も、同院に来るまでは、それぞれの生まれ育った場所でもある福岡と広島・岡山で長年働いてきた。慣れ親しんだ土地から離れ、東海地方の一宮西病院に着任するというチャレンジ精神に驚かされた。尾張西部の住民を肺がんから守るため、協働しながら治療にあたっている二人の穏やかな眼差しの奥に地域医療にかける熱い思いを感じた。

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