患者さんの合併症を含めて診療

　医療法人社団慈誠会グループは「医療から介護まで１本のレールで」をモットーに、東京都板橋区を中心に、10の病院、３つの介護老人保健施設、４つの介護専用型有料老人ホームを運営する。２０２２年８月、同グループの新たな医療施設、慈誠会・練馬高野台病院が開院した。

　病床数は回復期リハビリテーション病棟が１０８床、地域包括ケア病棟50床、医療療養病棟が60床の計２１８床。内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、通所・訪問リハビリテーションを置く後方支援病院だ。同院は手術を含め、外科的治療にも対応している。

「今の患者さん、特にご高齢の方はいくつもの合併症を持つケースが少なくありません。自分が担当する診療科目の視点のみならず、患者さんの合併症も含めて、きちんと診て差し上げられるように努力しています」と話すのは、同院の今井政人院長だ。

「当院は地域医療を担う先生方から患者さんを引き受け、基幹病院から急性期を脱した患者さんを受け継いで診ています。練馬区は、人口10万人あたりのベッド数が東京23区の平均数に比べ、かなり下回っています※。区民が診療を受けるため、区外に出ざるをえない。医療の空白化を避けるためにも、地域医療に深く貢献する覚悟で、このたび院長に就任しました」

自宅にいるような安らぎを醸成

　同院は患者を転院させることなく、術後のケアやリハビリテーション、在宅復帰、在宅ケアができるのが特徴だ。　院内の様子について、西原まりこ看護部長が説明する。

「当院はケアミックス病院（複数の病床機能を併せ持ち、急性期と慢性期の両医療に対応する病院）なので、比較的、患者さんの入院期間が長くなる傾向にあります。地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟ともに少なくとも２カ月以上の滞在になります。

　患者さんは治療やリハビリを真剣に受けている方たちですから、心もお疲れ気味に見えます。どうか、不安なく、病院スタッフに身を預けてもらいたいと思っております」

AI内視鏡で病変の可能性を検出

　同院は他院から転院した患者に対して、適切な検査と治療を施すことに日々、努力している。その際に使用する医療機器がAI内視鏡。機能の一つ「病変検出支援機能」は大腸ポリープなど、病変の可能性がある箇所を検出すると、対象エリアを枠で囲って表示、検出音を出して注意を促す。この機器の導入により、より病変を見逃すことのない検査が可能になった。

「開院してから約５カ月以上が経ち、その間、47もの病院から紹介を受け、患者さんを受け入れています。私たちは患者さんの健康状態を良くして、ご家庭にお戻しすることが役目。帰宅後も健康に毎日を過ごしてもらうためにも、ご家族の介護力もしっかり見極めるようにしています。

　さらに、スタッフは患者さんにとって適切な療養計画が出せるよう、看護婦、ソーシャルワーカー、薬剤師も交えた多角的な視点から話し合い、退院に向けた方向性を打ち出しています。患者さんの疾患や症状だけでなく、一人ひとりが抱える問題や背景も見ることこそ、今の医療に求められています」（今井院長）

※練馬区医師会調べ、地域医療資源（2021年11月時点）より

取材・文／星裕一朗