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独立行政法人国立病院機構

村山医療センター

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脊椎外科のトップランナーとして、
高度な治療技術で患者を救う

長期的な観点で患者に資する治療内容を追求

 脊椎外科なら村山へ。そう期待されるほど、高度な治療技術と専門性で知られる村山医療センター。昭和の頃から側弯症や脊髄損傷、脊椎カリエスなどの治療に注力し、現在も脊椎脊髄疾患や膝・股関節疾患、四肢の障害などを幅広く受け入れ、整形外科だけで年間1900件※以上もの手術実績を重ねている。

 同院を代表する脊椎脊髄部門には経験豊富な脊椎外科医が12名も集い、手術症例をカンファレンスで共有。手術の適応から治療法の選択まで意見を交わすことで、多角的な観点から最適な治療を検討している。「新たな治療技術も取り入れながら、長期的に患者さんに資する内容を追求しています」と谷戸祥之院長が話す通り、高度な技術に裏付けられた低侵襲手術も実施。その代表例が頸椎の疾患に対する選択的椎弓形成術(スキップラミノプラスティ)だ。

 従来の術式では、首の後方を切開して骨から筋肉を剥がし、神経を圧迫している部位を取り除く。ただ筋肉の損傷が大きく、術後に首の痛みや運動障害が生じるリスクが否めない。一方、選択的椎弓形成術では暖簾を分けるように筋肉と筋肉の間を拡げ、その隙間から処置するため最大限筋肉を温存できるのが特徴だ。顕微鏡を用いて狭い術野で行うことから高度な技術・修練を要するが、術後の生活に関わるだけに、積極的に提供していると谷戸院長。また低侵襲性により、軽度な症例にも適応できる利点があるという。「手の動きが悪化したり痺れが酷くなったりしてからでは、手術でも改善は難しい。疑わしい症状があれば早期に受診・治療することが重要です」

  • 脊椎脊髄疾患 手術実績
    頸部233件 腰部928件  ※2019年1月~12月

内視鏡手術や最新機器を活用より低侵襲な治療を届ける

 腰部の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症には低侵襲な内視鏡手術も使い分けている。従来の手術は背中を5㌢ほど切開して行われるが、内視鏡手術は2㌢ほどに抑えることが可能だ。筋肉の侵襲も軽減でき、早期の社会復帰を目指せると古川満医師。「脊椎の手術では数%に再手術が必要となることにもご留意下さい。もし初回から金属で固定すると再発時のリカバリーが困難。初回は侵襲の少ない治療を選ぶことが有益だと考えています。とはいえ内視鏡手術は手段の一つ。必要に応じて術中でも顕微鏡下手術に切り替えベストな内容を提供します」

 手術の質を高めるため、CT画像に基づいて手術をアシストするナビゲーションシステムや、神経の状態を確認する脊髄電気刺激装置などの最新機器も充実させている。それらの情報を、術者の眼鏡に表示するウェアラブルディスプレイまで取り入れているのも新しい。「モニターを見る必要がなくなり、術野に集中して精度を高めることが可能です。将来はリハビリなどへの応用も期待できるでしょう」と谷戸院長は有用性を語る。

  • 陽光が差し込むデイルームで、コミュニケーションをとって憩いの時間を過ごせる。

脊髄損傷の診療に注力快適な環境の新病棟も完成

 同院は脊髄損傷の診療・研究にも長年力を入れ、多くの患者に寄り添ってきた。脊髄が障害されると運動麻痺や感覚障害などを招き、四肢麻痺となることも珍しくない。ただ現在の医療技術では神経の回復は困難だ。そうした現状を少しでも変えるべく、肝細胞栄養因子を用いる再生医療の治験を開始。iPS細胞を用いて機能回復を目指す研究も進んでいる。

 また急性期の脊髄損傷には適切な治療を速やかに行い、損傷範囲を留める必要があるが、対応できる医療機関が限られていると谷戸院長は課題を挙げる。その背景には、高度な集学的治療を要するものの診療報酬の加算が少なく、治療後のリハビリも欠かせないため、診療を担うには赤字覚悟で取り組む現状があるという。「それでも誰かがやらなければ。当院の使命と捉えてスタッフ一同、力を尽くしています。加えて、こうした環境を変えるためには何が必要なのか精査し、情報発信にも努めます」

 2019年には入院・リハビリ環境の向上につながる新病棟も完成した。「脊髄損傷の患者さんの中には入院期間が長期になる方もいることから、快適に治療・リハビリを受けられる環境に重点を置いています」。そう古川医師が話す通り病室やトイレ、浴室は余裕を持ったスペースで、廊下はベッドがすれ違えるほど広く、車椅子や歩行器での移動・リハビリもスムーズに行える。各階のデイルームでは患者が一斉に食事をしたり、寛いだりできるなど、長期療養のストレス軽減に徹底的に配慮されている。

  • 落ち着いた色調でゆとりのあるスペースの病室も新病棟の魅力の一つ。
  • 廊下もベッドや人がすれ違えるほど幅広く、積極的にリハビリを行える環境が整う。

 新病棟の機能も活用し、今後も患者目線に立って良質で高度な医療の提供に努めたいと谷戸院長。「伝統を受け継ぎながら、さらに進歩した医療を目指して参ります」と力強く語った。

院長

谷戸 祥之

脊椎脊髄部門医長

古川 満

医療新聞社
編集部記者の目

 全国の国立病院(機構)の中でも、骨・運動器グループのリーダーとして、同領域の診療・研究を牽引してきた村山医療センター。脊椎外科の名医が揃い、日本全国からその治療技術を学ぼうと多くの医師が集まる様は、まさに「村山大学」と称されていたほどである。最先端の治療内容だけでなく、患者に資する医療を追求し、さらなる進歩を目指す姿勢こそ、脈々と受け継がれてきた伝統なのだろう。

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