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藤田医科大学病院

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さまざまな世代の側弯症に対する
長期的観点に基づく
high qualityな診療

小児から高齢者に至るまで側弯症に対する長期的観点に基づく適切な治療選択

 背骨(脊椎)が横に曲がる病気である側弯症には、大別すると2つのタイプがあり、1つは子供の頃から変形が進行するタイプ、もう1つは60歳代前後から変形が進行するタイプである。子供の頃から変形が進行するタイプでは、長期的なフォローが必要になるケースも少なくないが、長期的な観点に基づき、幅広い世代に対する側弯症診療を行っているのが、愛知県豊明市にある藤田医科大学病院である。側弯症診療のチームリーダーである脊椎・脊髄科(脊椎外科)の金子慎二郎教授は、日本における側弯症診療の草分け的な病院であり、「脊椎外科のメッカ」と称される国立病院機構村山医療センターで約12年間、側弯症診療を担当し、脊椎・脊髄センター長として、専門性の高い治療を要するさまざまな症例の治療を担当してきたが、2019年7月、藤田医科大学に脊椎・脊髄科(脊椎外科)の教授として赴任した。

 金子教授は、側弯症診療の特徴を以下のように述べる。

 「脊椎脊髄外科の領域の疾患に対する治療は、患者さんの年齢や個々の病態などに応じて、適切な治療が異なってきます。子供さんの頃に変形が進行するタイプの側弯症では、患者さんのその後の平均約70年前後の人生全体というスパンで考えた上で、何が問題になってくるのか、または問題にならないのか、何らかの治療介入をした方が良いのか、等、我々のような側弯症治療を専門とする医師でないとなかなかわからない部分があります。当院では、高度な専門的知識と判断に基づく診療を提供する場として、側弯診療の専門外来を設けており、小児の患者さんの長期的なフォローも、我々が中心としている診療の1つとして行っています。

 手術を行った方が良いと判断される場合にも、手術を行う時期に関する判断、手術方法の選択などに関して、いずれも高度な専門的知識に基づく判断が必要です。側弯症診療では、患者さんの病態に関する正確な評価を行った上で、長期的視点に基づいた治療を行っていくという観点で、当院のような高度な専門性を有する病院で治療を行うことが極めて重要です」

腰曲がりは年だから仕方がないのか

 手術の技術や道具の進歩に伴い、脊柱変形疾患では、世代を問わず、さまざまな病態に対する矯正手術が可能になっているという。金子教授に伺ってみた。

 「60歳代前後から脊柱の変形が進行するタイプでは、腰椎の骨と骨の間にある椎間板というクッションのような役割を果たす部分が年齢とともに徐々に傷んでくることが関係しています。

 脊椎は本来、横から見た骨の並びはまっすぐではなく、腰の部分(腰椎)が前に弯曲し(前弯)、背中の部分(胸椎)が後ろに弯曲し(後弯)、首の部分(頚椎)が前に弯曲して(前弯)いることでバランスを保っています。骨の並びのことをアラインメントと呼びますが、高齢の方の場合、腰が後ろに曲がる腰椎の後弯が認められることがあり、その場合、体が前に傾く傾向が認められます。体には重心の線がありますが、本来は、耳の辺りからまっすぐ下に降ろした線が体幹の重心の線になり、この重心の線が骨盤の上に来ないと人間は立つ際にバランスを取れなくなります。体幹の重心線が前方にずれることになるため、本来、重心線が通過する骨盤に重心線を近付けるために、骨盤を後ろに傾けないとバランスを取って立っていられなくなりますが、この骨盤後傾によって、腰から骨盤にかけての筋肉に過度な負担がかかり、これが腰背部の痛みにつながります。

 このような原因による腰背部痛の特徴は、立位の継続時に認められるということであり、脊柱変形の程度が大きい方の場合には、立位継続時の腰背部痛のために短時間しか立っていられないということになります。結果として、立位継続時の腰背部痛は、日常生活上、大きな問題となり、生活の質が大きく低下することになります。

 手術の道具や技術が進歩する前は、昔から『腰曲がり』と呼ばれてきたこのような病態を持った患者さんは、病院に受診しても、『年だから仕方ない』の一言で済まされる傾向にありましたが、現在は、手術の道具や技術が進歩し、さまざまな条件を満たせば、脊椎の変形矯正の手術を行い、愁訴の改善につなげることが可能になっています。脊椎の変形矯正の手術が、痛みの改善に限らず、『腰曲がり』の外見の改善、時には内臓の問題の解決にもつながり、生活の質の大きな改善に結びつくことも少なくありません。

 ご高齢の患者さんに対して手術を行う場合には、さまざまな併存症をお持ちの患者さんも少なくありませんので、合併症に対する対策も当然のことながら重要であり、全ての診療科のスタッフが充実している大学病院のような施設で診療を行うことは、重要な要素の1つです」

 長期的な視点に立ち、専門的なアドバイスを提供する藤田医科大学病院は、さまざまな形で脊柱変形を有する患者さんにとって、非常にありがたい存在となっているようだ。

藤田医科大学医学部
脊椎・脊髄科教授

金子 慎二郎

かねこ・しんじろう●医学博士(慶應義塾大学大学院)。1998年慶應義塾大学整形外科入局。2004年4月〜2007年9月、米国Harvard大学医学部に留学(同大学附属病院のBoston Children’s Hospitalに勤務)。2007年10月から独立行政法人国立病院機構村山医療センター(年間約1200件の脊椎手術を行っている脊椎疾患治療に特化した国のセンター)に約12年間勤務(脊椎脊髄セン

医療新聞社
編集部記者の目

医学・医療のイノベーション実現を目指し、新病棟の設立、大学名称の刷新と躍進を続けている藤田医科大学病院。脊椎外科(脊椎・脊髄科)の新設も、高度先進医療を積極的に提供しようとする姿勢のあらわれだろう。脊柱変形の治療では、患者一人ひとりの病態に応じた内容が求められる。「クオリティの高い手術は出来て当たり前。いかに最善の治療内容を検討・提供できるかが重要です」。そう話す金子教授から高いプロ意識と、患者の人生をも支えようとする姿勢を感じた。

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