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医療法人ゆずり葉会

宮川ホームケアクリニック

本当に「健康に生きる」とは
今この瞬間を幸せにするために行動すること
前向きな心持ちに変化させること

医師、看護師によるチーム医療を実践

 2013年7月、愛知県岡崎市で開業した宮川ホームケアクリニックは開院当初から年齢や病態に関係なく、かかりつけ医として訪問診療を引き受けてきた。20年1月、訪問診療に特化するようになり、現在は約160人の在宅患者と約80人の施設入居者※に対し、月2回の訪問診療を行っている。

 宮川院長の朝は早い。毎朝3時から同クリニックや外部の事業所のスタッフから共有された情報を電子カルテや医療従事者のSNS上でチェックし、その日の訪問診療の計画を立てる。

 午前は慢性疾患などの比較的病状が安定している患者10人程度を訪問し、午後は各種がんなどの重篤な患者5名程度の在宅診療を、時間をかけて行う。輸血、医療用麻薬の注射管理、腹水濾過濃縮再灌流(腹水を濾過して栄養を取り出し、患者の体内に戻す)、褥瘡陰圧閉鎖療法(創部を低圧状態に密封して回復を促す)など、対応している医療行為も高度で幅広い。

 同クリニックでは医師と、医療現場や大学院で研鑽を積んだ診療看護師(NP:ナースプラクティショナー)によるチーム医療体制を整えている。医師の指示や手順書に従い、より多くの特定の医療行為を実施できる診療看護師の存在で、24時間365日対応での医師の負担が減り、大いに助けられている。

他事業所との連携を統括するキーマンが重要

 宮川院長は訪問診療では、さまざまな職種・事業所との連携が何よりも重要だと考える。「最期まで患者さんを在宅で診るために活躍するのは訪問診療を行うクリニックの医師、スタッフだけではありません。訪問看護師、ケアマネージャー、訪問介護員など、在宅支援をするたくさんの事業所・人たちによって、患者さんの生活は支えられています。自宅は第一に生活をする場。医療は時々そこに介入するだけにすぎません」と話す。

 患者の身体変化は多様で、ケアの仕方も異なる。その一つひとつにオーダーメイドに対応するために、情報共有は非常に重要だ。ただ、在宅診療は関わる人数が多いために、情報の伝達が煩雑になりやすい。また医師が多忙なために、それぞれの支援事業所が医療機関と連携がとりたくても連絡がつきにくい、医師に話しにくいといったケースも発生しかねない。

 そこで診療看護師に同クリニックと在宅支援事業所の架け橋になってもらうことで、シームレスな支援体制を構築している。事業所の人が医師に言いづらいことでも、看護師には遠慮せずに話がしやすいというメリットもある。

大事なのは「快適な生活が自宅にある」ということ

 「例えば、がん末期で自宅にいると決めた患者さんにとって大事なことは、自宅での医療行為に入院中と同等レベルを求めることではなく、その人にとっての『快適さ』が生活の中心にあること。これは医療を差し控える提案ではありません。患者さんにとって緩和となる医療は十分に行います。しかし延命治療や過分な医療行為が、必ずしも患者さんの過ごす時間を良いものにするとは限らないということです」と宮川院長は話す。

 恐怖や不安で悩んでほしくないという思いから、自宅療養中の患者には体調の良い面や改善している部分を伝え、プラスのイメージを持ってもらえるよう働きかける。一方で患者の家族には病状をできるだけ具体的に説明し、容態が変化していく様子に動揺せずケアに取り組むようアドバイスしている。

「医療の発達で人々は健康と幸せを手に入れたのでしょうか? 本当に健康に生きるとは、体の不自由さや過去の御難に左右されず、今この瞬間を幸せにするために行動すること、前向きな心持ちに変化させることだと考えています。そのためには、その人にとっての『快適な生活が自宅にある』ことが不可欠なのです」と宮川院長は熱を込める。

※ 2021年7月現在

文/高橋 美森

院長

宮川 尚之

みやがわ・たかゆき●1997年、昭和大学医学部卒業、昭和大学一般・消化器外科入局。2001年から末期腎不全医療(透析治療)を中心に診療を行い、2006年、美合クリニック院長就任。2013年、宮川ホームケアクリニック開院。

診療看護師(NP)

吉家 直子

医療新聞社
編集部記者の目

 取材を始める前に宮川ホームケアクリニックのスタッフと、同クリニックと協力体制を築く事業所の方たち約70名で記念写真を撮った。今回の写真撮影の場には呼べなかったものの、日頃から連携する医療従事者や介護職の人たちは他にも多いという。多くの人たちの力がないと在宅診療は成り立たない。皆さんの活気にあふれた姿から仕事に対するモチベーションの高さが感じられた。

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