35年間にわたり歯科の訪問診療を行う

　横浜市戸塚区にある石川歯科医院では１９８６年から、寝たきりの高齢患者や通院困難な患者に対し、訪問歯科診療を行ってきた。年間１１００名以上の患者に対し、延べ５８００回※の在宅歯科診療を行っている。がん末期や神経性難病の患者も診療し、最近では精神科の疾病を持つ患者への訪問歯科依頼も増えている。

　「当時から来る高齢化社会で必要になると思い、訪問歯科診療をスタートさせました。少子高齢社会に突入した現在では医療機関や介護施設と自宅を、区別しないで診療を行うことが大切だと考えています」と石川院長は話す。

• 患者宅での訪問歯科診療の様子
• 患者に語りかける石川院長

口腔機能の回復や誤嚥性肺炎の予防にも取り組む

　「在宅医療の患者さんの１日は、ご家族や在宅医、介護関係者、行政担当者など、多くの方によって支えられています。在宅歯科医もそのひとりとして、口の中のことだけではなく、患者さんの病状や日常生活全般について考える必要があります」と考える石川院長は多職種と協調して、口腔機能の回復、誤嚥性肺炎や低栄養の予防にも積極的に取り組んでいる。患者が重症化した場合や、内科、外科の治療が必要な患者に対しては連携する医療機関を紹介する。

　戸塚区内の中核病院から訪問歯科診療の依頼を受けることも多い。場合によっては入院した患者の病室に訪問して、歯科治療を行うこともある。もちろん退院後には在宅での歯科治療の継続も可能だ。

　「これからも地域医療の一端を担う者として、歯科以外の在宅医、訪問看護ステーションやケアマネージャー連絡会と連携を取り、患者さんのお役に立っていきたい」と石川院長。今後も地域密着の歯科医院として前進を続ける。

※2020年1月～12月

文／高橋 美森