注目の最新治療 重粒子線治療

 


保険適用の拡大によって、 ますます注目を集める重粒子線治療
 
 重粒子線治療とは放射線治療のひとつ。放射線治療では電子より重いものを粒子線、陽子より重いものを重粒子線と呼び、重粒子線治療では主に炭素イオンを活用している。この炭素イオンを光速の70%に加速し、体の奥のがん病巣に照射する。治療には重粒子加速器という特別な装置が必要で、国内にはQST病院(旧放射線医学総合研究所病院)、兵庫県立粒子線医療センター、群馬大学重粒子線医学研究センター、九州国際重粒子線がん治療センター、神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設、大阪重粒子線センター、山形大学東日本重粒子センターの7施設で、世界全体では14施設である(2022年4月現在)。日本は重粒子線治療において世界をリードしているといっても過言ではない。
 
 重粒子線は体内で高線量域(ブラッグピークという)を形成することができる。このピークは体内における腫瘍の位置とサイズに合わせて調節できるので、がん病巣に狙いを定めた照射が容易となる。そのため、がん病巣に集中的に照射することができるので、がん周囲の正常な組織への影響が少なくてすみ、副作用の低減につながると考えられている。また、重い粒子を加速しているので、X線に比較して殺細胞効果が高いことから、これまでの放射線治療では根治が難しかった肉腫や悪性黒色腫といった腫瘍に対しても効果が期待できる。
 

 重粒子線治療が適している患者は腫瘍が局所に限られ、その部分を治療すれば完治が望める、または長期生存が期待できる場合、症状が取れて生活の質が上がる場合などとされている。治療にあたっては、まず患者に治療の適用が可能であるかを判断した上で開始される。
 

 この重粒子線治療を含めたがん粒子線治療に関して、公的医療保険の適用について徐々に対象が拡大してきている。2016年4月に切除できない骨軟部腫瘍、限局性の固形悪性腫瘍に限る小児腫瘍(陽子線のみ)、18年4月には前立腺がん、頭頸部がんが対象となり、22年4月、いずれも切除ができない場合を対象とした、局所進行性膵がん、肝内胆管がん、大型の肝細胞がん、手術後に再発した大腸がん、局所進行性子宮頸部腺がん(重粒子線のみ)が新たに対象となった。これによって、経済的負担が軽減される患者の対象が広げられたこととなる。
 


 

 
 
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 QST病院

 

 
 
重粒子線治療のパイオニア さらなる技術発展を目指す
 
 

他の放射線にはない優位性を持つ重粒子線

 千葉市稲毛区にあるQST病院(旧放医研病院)は1994年6月に重粒子線治療を開始し、2022年3月までに1万4105例もの症例を手掛けてきた。
 
 重粒子線はⅩ線などの光子線と比べ、ふたつの特長がある。ひとつは線量集中性が優れているので、体内に入射した後、がんの位置でエネルギーを最大ピークにでき、かつ周囲の正常な組織を効率的に避けて照射することが可能である。もうひとつは、重粒子線は非常に重い炭素粒子を使用しており、その結果として細胞致死効果も大きくなっている。例えていうなら、他の放射線がテニスボールなら重粒子線はバスケットボールくらいの威力がある。
 

重粒子線治療室。固定具をつけた患者を治療台に固定し、重粒子線を照射する

 同院の重粒子線治療で特筆すべき点は、まず高速3次元スキャニング照射法だ。6ミリ程度の細いビームで腫瘍を塗りつぶすように照射する。また世界でも3つしかない回転ガントリーを有し、患者を治療台に固定したまま、あらゆる角度から重粒子線を照射できる。これらを組み合わせ、難しい部位の腫瘍や複雑な形の病巣でも正常な組織を避けて腫瘍のみに線量を集中するので、副作用の低減が期待できる。
 
 治療は、重粒子線治療が適用可能と判断された患者に、インフォームドコンセントを行う。患者の同意後に固定具を作成、治療計画立案用のCTを撮影後に治療を開始する。治療期間は従来の放射線治療より短期間で済み、患者負担を低減できる。
 

重粒子線治療を強化すべく多様な研究が進行中

 同院では重粒子線治療のさらなる発展に向け、研究を進めている。重粒子線は加速させる装置が非常に大きいので、現在のサッカー場ほどの大きさからバレーコート程度の規模まで小型化することを目指している。また、他の治療法との併用についても研究が進んでいる。
「がん細胞に取り込まれる放射性核種標識薬剤を投与し体の中から放射線治療を行う標的アイソトープ治療(RI内用療法)があります。我々は中でもアルファ線薬剤による治療に注目し、すでに臨床応用準備に入っています。このアルファ粒子というのも実は重粒子の仲間なのです」と山田滋病院長は語る。
 
 重粒子線治療の可能性は、今後さらに広がっていくだろう。

 

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