• 静岡県

静岡県立こども病院

日本の小児医療を先進技術で牽引するエキスパート集団

40年以上の歴史を誇る小児の循環器治療

 気軽に登山やピクニックが楽しめる1000m級の低山として、静岡市民に愛される竜爪山。その緑深い頂が建物の背後にそびえる「静岡県立こども病院」は、周囲にのどかな田園風景が広がる小児総合医療施設だ。

 開院は1977年3月。現在、新生児科、循環器集中治療科など、28の診療科に約150名の医師が勤務している。279の病床数を持ち、手術室は7室体制。県内の地域医療、小児医療に貢献、高度かつ先進的な医療を提供してきた。同院は小児の循環器治療で40年以上の診療実績を誇る。

「2007年、当院は循環器科、心臓血管外科、一体となり、循環器疾患を総合的に診療する循環器センターを開設しました。一小児病院で、これだけ多数の診療科目を持ち、こころから身体、胎児から若年成人まで広範囲に網羅する病院は国内で数少ないでしょう」と話すのは現在も心臓外科手術で執刀にあたる同院院長の坂本喜三郎医師だ。

 開設以来、循環器センターの患者数は入院、外来ともに延べ1万人を超えた。今では数多くの患者が全国から来院、受診している。

 循環器センターが取り組む診療について、副院長兼循環器センター長の田中靖彦医師が説明する。
「例えば、心室中隔欠損など1回の手術で改善する疾患の他、心室が1つしかない状態に弁の逆流や肺血管の成長不良を合併した、他院では治療困難とされる複雑心奇形などを診療します。これは内科と外科の協力のもと、診断、手術、あるいは術前後にカテーテル治療をして総合的に治します。途中、不整脈が出たら、治療に特化した医師が即座に対応。複雑心奇形の合併症で、胸腔内に液体が溜まる胸水には、リンパを担う医師が対処します。約200種類ある先天性心疾患のほか、これら付随する疾患を各分野のエキスパートが総合的に治療できるのがセンターの強みです」

本初、極低出生体重児へのカテーテル手術が成功

 同院が日本の小児医療を牽引するゆえんが研鑽を積み、術数が豊富なエキスパートたちだ。

 画像診断のエキスパートで心臓MRIを担当する佐藤慶介医師。「成人と違い、お子さんの心臓はできあがっていくもので、特に、当院が扱う心臓は通常の形態と違うものもあります。こうした特殊性を配慮しながら診断します」

 カテーテル治療も実績は目覚ましい。先天性心疾患の一つ、動脈管開存は通常、出生後に閉じる肺動脈と大動脈をつなぐ血管が開いたままになり発症、重篤化しやすい。

「これを閉鎖栓という道具を使い、カテーテル治療します」と語るのはIVRセンター長の金成海医師だ。2019年と2020年に2種類の新しい乳児用閉鎖栓が導入されたが、そのいずれも日本で初めての閉鎖栓治療を遂行し、全国への普及に携わっている。

「2021年10月には日本で最低体重1134グラムの閉鎖栓治療に成功し、その1年後に最低体重863グラムを更新しています。今後は国内で認可されたばかりの、経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)により、先天性心疾患術後の肺動脈弁逆流・狭窄の成人患者さんも治療していきます」(金医師)

日本で2番目の不整脈内科では小児へのアブレーション手術が可能

 2021年4月、国内の小児科病院では初、小児専門の不整脈科としては国内2番目の不整脈内科が発足した。

「循環器科、心臓血管外科、集中治療科と協力し、不整脈疾患を治療します。不整脈の原因を熱焼却するカテーテルアブレーションを施術できるのも、当科の強みです」(芳本潤医師)

 小児循環器への知見を蓄積してきた同院が総力を結集する診療体制が、小児の肺血管の異常を扱う「先天性心疾患 肺血管再建治療プログラム」。指揮するのは副院長の猪飼秋夫医師だ。

「先天性心疾患は心臓のみならず、肺血管と肺の循環も同時に診る必要があります。肺は全身に運ぶ酸素を血液に乗せる大事な臓器。この肺と心臓をつなぐ血管全てが治療対象で、肺動脈弁閉鎖不全による弁逆流もその一つです。プログラムでは、肺血管の異常病変に対して肺動脈を再建し、小児循環器科医、小児心臓外科医、集中治療科医が協働する、潤沢なマンパワーで治療します」

 また、同院は成人した先天性心疾患患者を小児病院以外の医療施設へと移す際の受け皿となり、連携する静岡県立総合病院を紹介している。

 最後に、坂本院長が先天性心疾患を抱える子どもを持つ、親御さんに呼びかける。

「重症の心疾患でも克服できる確率は確実に上がっています。まずは医師に相談してください。小児医療に携わる者は患者さんとその家族と一緒に前に進む覚悟を持っています。相談する前よりも、きっと良い方向性を提示できると思います」その病気を克服できる確率は上がっています。まずは専門家に相談してください。当院を含め、小児医療に携わる者は患者さん、その家族と一緒に前に進む覚悟を持っています。相談する前よりも、いい方向性を提示できると思います」

  • ファシリティドッグのタイくん。子どもたちに寄り添い、勇気を与えます。

院長

坂本 喜三郎

副院長兼心臓血管外科 科長

猪飼 秋夫

副院長兼循環器センター長

田中 靖彦

不整脈内科科長

芳本 潤

IVRセンター長

金 成海

心臓MRI担当

佐藤 慶介

成人移行・診療センター長

満下 紀恵

エコーセンター長

新居 正基

医療新聞社
編集部記者の目

 低体重の幼児の心臓治療に成功するなど、静岡県立こども病院は小児の循環器疾患の診断と治療で名高い。診断と治療レベルの高さは折り紙付きだが、院長からは、疾患を抱えた子を持つ親への配慮が随所にうかがえた。取材終了時、院長の坂本喜三郎医師は力強く、こう語った。
「親御さんは、病気を抱えたお子さまと共に生きていくにも、苦労が多いかと思います。当院はご家族の生活や人生の質を高められるよう、スタッフによる支援体制も充実しています。病気を克服できる確率は日々上がっています。私たちはご家族のみなさんと一緒に、覚悟を持って、治療に全力を注いでいきます」
 院長の矜持を十分に感じながら、院を後にした。

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