• 兵庫県

兵庫県立粒子線医療センター

集学的粒子線治療で
難治性進行がんに挑む

重粒子線と陽子線を併用最新のがん治療

「世界に誇れるがん治療施設を兵庫に」という県のプロジェクトによって2001年に誕生したのが兵庫県立粒子線医療センター。全国25カ所の粒子線治療施設の中で唯一※1、重粒子線と陽子線の両方で治療可能だ。

粒子線は、がん細胞殺傷能力が高く、病変部でエネルギーを最大化し、停止する。手術や従来の放射線(X線)治療が難しいケースを中心に実績を重ね、症例数は9834人※2を数える。

「破壊力が強いのは重粒子線ですが、陽子線も同様に優れた治療成績が出ています。そうなると大切なのが周辺臓器への影響。2種類の粒子線治療プラン(1回あたりの照射量、方位、回数など)を作成・シミュレーションし、どちらが、より副作用が少ないかを検証します」と沖本智昭院長は話す。

 来院が難しい方にはオンライン診療を活用するなど、柔軟に治療を進めている。通常は初診から治療開始まで2~3週間程だが、一刻を争う進行がんには初診から1週間程で治療開始と超特急で準備する。

 特に力を入れているのが、22年に保険収載された肝がん、膵がん。切除不能なステージの患者が最後の砦として訪れる。

「難治性の進行がんのため、粒子線とはいえ、単独で治療できる患者さんはごく限られます。外科、内科と協力しながら集学的粒子線治療を実施しています」と沖本院長。

 外科の協力で放射線感受性の高い胃と腫瘍の間に吸収性スペーサーを挿入し、胃にあたる線量を大幅に削減することで、より効果的な照射を実現。内科のサポートで全身化学療法はもちろん、血管内から腫瘍に直接、薬剤を送るカテーテル治療法も行う。保険収載後、患者数は肝がん約2倍、膵がん約3倍と大幅に増加した※3。

 照射室5室、病床50床を備える兵庫県立粒子線医療センターは2つの粒子線をベースとした集学的治療で、がん撲滅という目標に向かい歩みを進める。

※1 公益財団法人医用原子力技術研究振興財団HPより ※2 2001年4月~2022年3月 ※3 2021年と2022年、4月~9月の治療実績比

  • 後ろから見た回転ガントリー
  • 回転ガントリー照射室

院長

沖本 智昭

1990年長崎大学医学部卒業。日本医学放射線学会認定放射線科専門医。神戸大学大学院客員教授、大阪大学大学院招へい教授。

医療新聞社
編集部記者の目

兵庫県立粒子線医療センターは全国25の粒子線治療対応施設の中で唯一、重粒子線と陽子線の両方に対応するという特徴がある。また粒子線治療特化施設としては珍しく、入院施設も用意することで、進行した難治性の肝がんに対し、TACE(肝動脈化学塞栓療法)との集学的治療も可能だ。沖本智昭院長は「難しいケースだからこそ、粒子線治療やTACEによる集学的治療で助かる人を増やしたい」という。取材後、院長自ら施設案内をしていただいた。どのような設備で2種類の粒子線を使用するのか気になっていたが、加速器などは同じものを使用し、イオン源を切り替えていた。設立当初、切り替えに1時間近くかかったが、現在は10分程度だそうだ。午前は陽子線、午後は重粒子線の患者と集約し、効率的に治療をすすめている。

Information

兵庫県立粒子線医療センター

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