脳神経外科・脳神経内科医が一体となって治療にあたる

脳疾患、脊椎脊髄疾患の治療には脳神経外科医と脳神経内科医の緊密かつスピーディーな連携が欠かせない。

　大阪府藤井寺市にある田辺脳神経外科病院は「外科」と名乗ってはいるものの、「脳神経外科常勤医７名に加え、脳神経内科常勤医も４名在籍しているのが大きな強み。外科と内科が協力してワンチーム治療にあたっています」（田辺英紀院長）と実質的なセンター機能を備えている。

　診察室は5室あり、めまいや頭痛、しびれ、首・背中・腰などの痛みを訴える患者に対し、外科と内科が一体となって検査・診断にあたる。慎重な意見交換を経て治療方針を決める。

　外科、内科単独では、どちらかに片寄った診断・治療になりがちだが、両者が一体となることで、患者にとって適切な治療を提供することができる。

　田辺院長は大阪屈指の総合病院などで腕を鍛えた後、経営不振に陥った民間病院の再建を任され、42歳の若さで病院長に就いた。２０００年代初頭に早くも外科と内科が一体となった脳神経、心臓、消化器センターを設置するなどの改革を実行、見事に再建を果たした。２００８年、「理想の病院」をつくるべく、田辺脳神経外科病院を開業した。

• ※頸椎・腰椎椎間板ヘルニア・脊柱菅狭窄症など

救急隊や地域医療機関からの信頼も厚い

　治療を支える検査機器も充実。２０２０年には２機目のMRIとして高解像度の３・０テスラMRIを導入した。従来のMRIに比べ、画像情報が多く、診断能力も高い。

　患者の動線を配慮して、CT室、MRI室、心電図・頸動脈エコー室、検査室は隣接。廊下を挟んで手術室２室と、脳動脈瘤や頸動脈ステントなどのカテーテル治療を行う血管内治療室があり、患者は最短距離で移動できる。「救急搬送を積極的に受け入れており、脳卒中など時間勝負の症例も多いんです。検査や手術室への移動に時間がかかっては本末転倒。ひとりでも多くの患者さんを救いたいとの思いから、コンパクトな設計にしました」（田辺院長）

　南大阪全域、大阪市内から年間に受け入れる救急搬送は約２０００件を超える※。さらに２０２１～２０２２年は大阪市内の大病院が新型コロナウイルス感染症対応に追われたことから、これらの病院で対応できなかった脳卒中などの患者も多数引き受け、治療を行った。救急隊や地域医療機関からの信頼も厚い。
　未破裂脳動脈瘤、脳腫瘍、三叉神経痛、顔面けいれんなどの脳疾患だけでなく、脊椎脊髄疾患の治療に力を入れている。年間６００件以上※の手術を手がけているが、そのうち３５０件は頸椎・腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など脊椎脊髄疾患の手術。「首・腰が痛い」といった症状は実は神経外科的な症状であることが多い。

　脊椎脊髄手術は顕微鏡下で行っている。切開創が小さく、出血量も少ないうえ、神経をきれいに温存できる。体への負担が少なく、患者は手術当日に体を起こして食事ができ、翌日からは歩行が可能だ。入院期間も３～７日と短い。

• 先端機器を導入した２つの手術室

大阪の玄関口・梅田に脳・脊髄・神経クリニックを開設

　２０２１年、大阪の玄関口・梅田に分院である「梅田 脳・脊髄・神経クリニック」を開設した。脳、脊髄、神経の３科がそろっていることが大きな特色。３・０テスラMRI、脳波、筋電図、神経伝導速度検査機器など先端機器を導入。脳神経外科（脊髄外科）と脳神経内科のベテランが治療にあたる。大阪北部はもちろん、東は名古屋市、西は九州・沖縄まで広範囲から患者が訪れる。手術が必要なときは田辺脳神経外科で実施する。今や同病院の手術件数の１割はクリニックからの紹介だ。

東京・町田にも分院を開設、新しい出発を果たした

　さらに東京・町田の医療機関の再建を依頼され、田辺院長が法人理事長に就任。３・０テスラなど田辺脳神経外科と同等の設備機器を整えた。土曜日には田辺理事長自らが外来に立ち、手術も担当。２０２２年３月には町田脳神経外科へと名称を変更。新しい出発を果たした。