• 大阪府

社会医療法人 生長会

府中病院

  • 動画あり

ロボット支援下手術の
対象疾患を広げ、治療成績向上に努める

各診療科にエキスパートがいる泉州地域の中核病院

 大阪府の泉州地域は府の南西部に広がり、和泉市、堺市、貝塚市、岸和田市など9市4町にまたがるエリア。この地域は律令国家の時代に和泉国と呼ばれたため、エリアを縦に走るJR阪和線には和泉橋本、和泉砂川、和泉鳥取など、古の国名にちなんだ駅名が点在する。

 泉州地域のほぼ真ん中に位置する府中病院もまた、最寄り駅はJR阪和線の和泉府中駅。同院は駅の西口から徒歩2分とアクセスが至便だ。1955年に開設。病床数は380床を数え、各診療科に複数のエキスパートを配置している。泉州医療圏の中核病院として診療体制を敷いている。

 2016年、低侵襲手術支援ロボット「ダビンチ」を導入。ロボット支援下手術は、従来の鏡視下手術にロボット機能を付加した術式だ。術者が3Dモニターを見ながら内視鏡カメラとロボットアームを遠隔操作する。従来不可能とされた角度からの視野を確保、鉗子を自在かつ精密に動かせる。

  • 低侵襲手術支援ロボット「ダビンチ」

3D画像で患部を微細に把握、正確な切除が可能

 同院は前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術を皮切りに、年々、対象疾患を広げ、ロボット支援下手術の治療成績向上に努めている。

 泌尿器科部長およびロボット手術センター長の播本幸司医師は前立腺がんに対するロボット手術において、「がんの存在部位にもよるが、男性機能の温存や尿失禁を防ぐために内骨盤筋膜温存による神経温存手術や尿道をなるべく長く残すことで術後の尿失禁の軽減を行っている。これらの操作は手術支援ロボットを使い、3D画像で拡大視野を確保すると患部を微細に把握でき、より正確な手術が可能です」と立体的なハイビジョン画像で見えることの有用性を強調する。前立腺がん以外にも膀胱がん、腎がんや腎盂がんや尿管がんなどにおいてロボット手術は同様に制がん性や安全性に出血量の少なさ、術後回復期間の短縮等において優れていると感じている。

  • 「奥行き感のある3D画像で視野を確保できる」と播本 幸司医師

 西川德彰医師、岡村太裕医師の両泌尿器科医長もロボット手術がもたらした影響について言及する。

「内視鏡カメラが映し出す3D画像はものすごく臨場感があります。より奥まで見えるなど、患部の把握が容易になりました。その結果、手術時間を短くできたのも、ロボット支援下手術の優位性だと思います。今後、医師側に解剖学的な知識がもっと増えれば、さらに根治性の高い、精密な治療ができるはずです」

ロボットへの誤解を払拭し、安全性、至便性を説明

 こうして、ロボット支援下手術に舵を切った同院はロボット導入後の翌年に胃がんの手術を始め、その次の年、直腸がんの手術に着手。年々益々、ロボット支援下手術のノウハウを蓄積している。

「ロボット支援下手術と聞くと、特にご高齢の患者さんは人工知能を持ったロボットが勝手に動いて手術すると怖がる方もいます。もしくは、実験台にされるのではと。それらの不安を払拭するため、ホームページなどをお見せしながら、全体の流れを説明し、手術がいかに安全で便利なのかを理解してもらっています」と説明するのは、外科センター長で、消化器がんで多くの治療実績を誇る田中浩明医師だ。

  • 田中 浩明医師は「ソロサージェリーができるのが強み」と強調

「ロボット支援下手術は執刀医が1人で機器を操るソロサージェリーができるのが強みです。ぶれない視野が確保でき、思い通りに機器を動かせます。特に、食道胃接合部がんの場合、左右の肺に挟まれた縦郭の狭い領域でぶれずに機器を操作できるのは心強い。胃がんの手術に必要なリンパ節郭清を血管からの出血を抑え、しっかりできるのもメリットです」
 大腸・肛門疾患の治療数、知見共に豊富な外科センター消化器外科部長の野田英児医師は「ロボット支援下手術は術者の負担軽減が利点」と指摘する。

「腹腔鏡下による直腸がんの手術の場合、鉗子は直線的にしか動かせません。しかし、ロボット支援下手術の場合、鉗子をまっすぐ奥へ進め、その先で90度近く曲げてから切除や焼灼も可能です。腹腔鏡下のように助手に頻繁に指示する必要がなく、自分がやりやすい体勢で施術が可能なので、ストレスなく手術できます。それが治療成績の向上につながっています」

  • ロボット支援下手術の光景

肝胆膵外科の中心として、地域医療に貢献

 肝胆膵外科疾患は肝細胞がんや胆管がん、膵臓がんなどがあり、これらの手術は高難度が多いことで知られている。その1つ術前門脈塞栓術において、「肝臓を50%以上除去する場合、切除予定の肝臓を栄養する血管を塞栓させ、残る肝臓へより多く血流を促し、肝臓を大きくさせます。これにより、手術後の肝不全を防ぐのです」と解説するのは、外科センター肝胆膵外科部長の山添定明医師。同院は2022年4月に新たに保険収載されたロボット支援肝切除術もいち早く開始している。肝胆膵外科のこうした取り組みは肝胆膵の良悪性疾患に極めて精通する山添医師の努力抜きには語れない。

「がん診療は今、外科のみで成り立つものではなく、集学的治療にシフトしています。私たちも診断、術式の選択、手術まで周到に準備し、他科多職種と密に連携を取りながらの治療を心がけています。これからも、当院は泉州医療圏において、肝胆膵外科の中心として、地域医療に貢献していきます」と山添医師は意気込む。


山添 定明医師


縫う作業に長け、仙骨膣固定術に真価を発揮

 婦人科疾患はロボット支援下手術がいかんなく真価を発揮すると言われている。
「子宮や卵巣などの臓器は深い場所にあります。ロボットならば、臓器に数㍉単位で接近でき、正確な治療が可能です。このメリットを考えると、婦人科疾患は相性がいいと言えますね」とうなずくのは、産婦人科副部長の木下弾医師だ。

  • 「臓器に数㍉単位で接近可能」という木下 弾医師

「組織を摘出する際、鉗子などで軟組織を押し広げながら慎重に剥がす鈍的剥離に対し、ロボットならば組織に負担をかけず、電気メスやはさみで正確に摘み取る鋭的剥離に長けています」と手技の緻密さ、正確性に言及するのは、産婦人科医長の山崎亮医師だ。

「骨盤の中にある子宮などの臓器の支えが緩んで下垂、膣から出る骨盤底臓器脱には、人工のメッシュで膣を引き上げて仙骨に固定する仙骨膣固定術を施します。これは一言でいえば縫う手術。ロボットの関節機能を使えば、腹腔鏡とは違い、自由にあらゆる角度から縫合できます。これもロボット支援下手術が婦人科疾患と相性がいいといわれるゆえんだと思います」

 府中病院は今後も、ロボット支援下手術の機能を活用して、地域医療に貢献する構えだ。

  • 前列、左から野田 英児医師、播本 幸司医師、田中 浩明医師、後列、左から西川 德彰医師、岡村 太裕医師、山﨑 亮医師、木下 弾医師

医師

播本 幸司

医師

田中 浩明

医師

野田 英児

医師

山添 定明

医師

木下 弾

医師

西川 德彰

医師

岡村 太裕

医師

山﨑 亮

医療新聞社
編集部記者の目

「今の患者さんは疾患や治療についてよく調べられて来院されるので、聞かれる質問もさまざまですね。それらに真摯に答えられるよう、努めています」とロボット手術センター長の播本幸司医師は笑顔を見せる。この言葉通り、同院では患者へ懇切丁寧に語りかける様子があちらこちらで散見できる。
「ご高齢の患者さんの中にはロボット手術について、誤解されている方もいますね。ボタンをぽちっと押して、機械が勝手に体を切ったり縫ったりするのではと。その誤解を解くために、例え話を工夫します。よく、挙げるのはマジンガーZやガンダムですかね。あのロボットと同様、私たち医師が操縦席に座って手足を操り、手術しますからねと丁寧に説明して、やっと理解してもらっています」(播本医師)
 診断や治療の技術力だけはない、患者の心を常に思いやる“人間力”にも長けた病院なのだ。

Information

社会医療法人 生長会

府中病院

ホームページ

〒594-0076
大阪府和泉市肥子町1-10-17

診療日:月~土

診療受付時間:8:00~11: 45

休診日:土午後、日、祝日

TEL.0725-43-1234


2024年12月、新病院へ

府中病院は泉大津市立病院と統合し、公設民営の泉大津急性期メディカルセンターに生まれ変わる。移転先は泉大津市我孫子周辺で、地上8階、病床数300床の医療施設となる。2024年度の早期竣工を予定している。

府中病院 紹介動画