マンモグラフィと超音波検査（乳腺エコー）を併用

　大手町さくらクリニックin豊洲の前身は西山寿子院長によって２００７年、東京・大手町に開業した。２０１０年、発展著しい江東区豊洲に移転。人間ドックや企業健診、自治体健診、がん検診など予防医療に力を入れる。

　健康診断・検診の精度と、丁寧なアフターフォローが評判になり、「予防医療の先導的医療機関」として広く知られるようになった。

　なかでもマンモグラフィと超音波検査（乳腺エコー）を併用した乳がん検診には定評がある。国が推奨するマンモグラフィは乳がんがあると生じる石灰化の発見に威力を発揮する。ただ、乳腺密度が高い高濃度乳腺の場合、全体が白っぽく映り、石灰化が見落とされるケースがあるのだ。

「50歳未満のアジア人の女性の約8割が高濃度乳腺であることから、３Dマンモグラフィを使ったとしても、病変を見つけづらい方がいます。そこで日本乳癌検診学会ではマンモグラフィに加え、小さな腫瘍を発見できる超音波検査を併用した総合判定を奨めています」（西山医師）

　超音波検査でも技師によるハンドヘルドエコーに加え、乳房用自動超音波画像診断装置（ABUS）の最新機種を導入。受診者に適したエコーをオプションとして選択することができる。

• ３Dマンモグラフィ（トモシンセシス）
• 乳房用自動超音波画像診断装置（ABUS）

「健診システム」をクラウド化スマホで健診データを確認

　同クリニックでは受診者を第一に考え、新しい技術を積極的に導入している。２０２３年６月には「健診システム」のクラウド化を実現した。それに伴い、受診者が血液検査などの健診データをスマートフォンなどで見ることができるようになった。

　同クリニックの健康診断を受けると、約２週間後に結果が各人のもとに届く。それ以降であればスマホなどで自分のデータを、いつでも確認できるのだ。別の医療機関を受診した際、過去の健診データを簡単に医師に示すこともできる。クラウド上に保管されるので、データが消えることはない。

　同じく６月には乳がん検診に用いられるマンモグラフィ（乳房専用のX線撮影）の最新型である「３Dマンモグラフィ（トモシンセシス）」が稼働を始めた。アームが回転し、多数の断面の画像を撮影できる。従来の２D撮影では乳腺に重なって認知できなかった腫瘍も検出できるようになった。東京都予防医学協会の調べでは「2D撮影の約2.5倍の乳がんを発見」することができたという※。

サイバー攻撃対策として電子カルテシステムをクラウド化

　近年、問題となっているのが医療機関を標的としたランサムウェアなどのサイバー攻撃。電子カルテシステムなど医療情報システムを導入した医療機関は増えてきたが、情報セキュリティ対策が万全といえる医療機関は多くはない。
「究極の個人情報」ともいうべき電子カルテなどの重要な医療情報を守るための対策が、どの医療機関にとっても喫緊の課題となっている。
　同クリニックでは早くから情報セキュリティマネジメントシステム（ISMS）を構築。情報セキュリティの維持・向上に力を入れる先進的なクリニックとして知られ、利用者である企業や地方自治体からも厚い信頼を寄せられている。
「セキュリティ対策として、２０２３年３月から『電子カルテシステム』をクラウド型に変更しました。従来、電子カルテはクリニック内のネットワークに収納、『クローズドだから安心』と思っていましたが、最近、クローズドなシステムであってもサイバー攻撃を受ける例が多発しています。受診者の個人情報はなんとしても守らなければいけない。クラウド型にしたことで受診者の皆さんにも安心感を持っていただけると思います」
と西山医師は話す。クラウド化したことで地震などの災害でデータが消えたとしても、たやすく復旧できる。女性の健康を守り、女性の命を支える――そのために同クリニックの挑戦は、さらに続く。

※https://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/gan/3d_mammography.html