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医療法人徳洲会

千葉西総合病院

根治を目指す、あきらめない医療を実践

肝胆膵がん治療には高度な知識・技術が必要

 摂取した栄養素を代謝する肝臓、胆汁の通り道である胆道、インスリンを産生する膵臓、これらは総称して肝胆膵と呼ばれる。胃や大腸のように食べ物が通過はしないが、消化や吸収、解毒、不要物質の除去を担うなど、生命維持に欠かせない重要器官だ。

 肝胆膵がんが難治性がんといわれるゆえんは早期診断の難しさ、薬物療法への抵抗性などが挙げられる。肝胆膵領域は腹部の深い位置にあり、出血がしやすい。正確に診断し、腫瘍を適切かつ安全に切除するには、高度な知識と技術が求められる。

 千葉県東葛北部医療圏の中核病院、千葉西総合病院は各地のがんセンターで研修を積んだ医療スタッフと肝胆膵外科のスペシャリストが肝胆膵がんの診断、治療に取り組んでいる。

「2018年、当院は肝臓がん、胆管がん、膵がんなどの高難度の手術を施術できる施設、日本肝胆膵外科高度技能専門医修練施設に認定されました。肝胆膵の手術件数が豊富で多くの知見を積んでおり、膵液漏などの合併症に迅速に対応できるのも当院の特徴です」と話すのは同院副院長で外科主任部長の緒方賢司医師だ。

術前に化学療法を加えるコンバージョン手術を実践

「当院ではさまざまな抗がん剤や放射線治療、重粒子線治療を術前に加え、手術可能な状態にまで持っていき施術するコンバージョン手術が増えています。従来なら、切除不能といわれた症例もコンバージョン手術を用いることで可能となり、治療成績が向上しています」(緒方医師)

 同院は2016年に手術支援ロボット・ダビンチを導入。その特徴は手術の際の傷跡が小さく、術中の出血量を抑え、患者への負担が少ないことだ。鉗子が広く可動し、手ブレを抑制。鮮明な3D画像で確認しながら施術できるメリットもある。鮮明な映像を医師や看護師、臨床工学技士などのチームのメンバーと共有できる。若手医師が映像を見て学べる教育的デバイスの側面もある。

チーム医療でロボット手術をさらに有効にする

 肝胆膵がんの治療に取り組む外科医長の小林亮介医師がロボット手術の有用性を語る。

「ロボット手術で得られる3D画像が、いよいよ開腹で目視していた時の鮮明さに追いついてきた印象です。顕微鏡のように施術領域に極力近づき、細かい部分まで見えるのには隔世の感があります」

 また、ロボット手術に臨む際のチーム医療の大切さについて言及する。

「個々の症例により、お腹の中は解剖学の教科書通りではありません。それぞれの状態をCT画像などで確認しながら、術前に医師同士で切除箇所などを話し合います。入念に検討を重ねて手術に臨むのです。そうした医師同士の協働、連携といったソフト面も非常に大切にしています」(小林医師)

  • 肝胆膵外科手術で使用する最新のダビンチXi

臓器を直に見て触れた開腹手術の経験を活かす

 主に開腹手術をしていた経験が、現在のロボット手術に活かされていると言うのは、外科副部長の森本喜博医師だ。

「私たちの世代はたくさんの患部を直に見て、多くの臓器に触れてきました。そうした経験から、今もお腹の中を目視した瞬間、なんとなく、ここが危ないという感覚を肌身で感じることができるのです。こうして、患者さんの状態を瞬時に把握、治療方法を先取りして導き出せる開腹手術時代の経験は、腹腔鏡やロボット手術でも大いに活かされていると思います」

 外科医の鈴木文武医師は肝胆膵がん治療の在り方についてこう語る。

「がんをしっかり治すという確固たる意識を持つ必要があります。ロボット手術は最先端で非常に優秀。その半面、肝胆膵がんの場合、開腹手術よりも手術時間が長くなりがちで、それがデメリットになる方がいるのも事実です。患者さんに最適な治療方法が開腹なのか、腹腔鏡か、ロボットがいいのかをしっかり患者さんと話し合って選んでいます。がんの根治率を下げないように努めることが私たちの使命なのです」(鈴木医師)

 同院は一つの方法、見方にとらわれず、さまざまな選択肢を提示、患者に優しく最適な治療を実践する。根治を目指す、あきらめない医療をいつも胸に秘めている。

副院長
外科主任部長

緒方 賢司

外科医長

小林 亮介

外科副部長

森本 喜博

外科医

鈴木 文武

医療新聞社
編集部記者の目

 病床数は608床、職員数が約1400名、診療科は31を誇る大規模総合病院は、日々、外来が絶えない。取材に応じてくれた副院長で外科主任部長の緒方賢司医師が語った言葉には、地域医療に貢献しようとする、熱意とひたむきさが感じられた。
「高齢の患者さんに化学療法までして手術をすべきなのかとか、いろいろ考えます。各自、体力も違いますし、合併症の危険度もおのおの違いますからね。それを総合的に判断して治療方針を決めるのです。手術前の説明ですか?少なくても1時間はかけてお話しています」と緒方医師は話す。
 患者を思い測り、丁寧に真摯に診療する実像がうかがえた。外来が絶えない理由をそこはかとなく知った。

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千葉西総合病院

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