• 神奈川県

横浜新都市脳神経外科病院

治療の迅速化、設備の拡充… 飽くなきアップデートで
地域を支える 脳卒中治療のエキスパート

脳の血管が詰まり、狭窄や破裂で損傷。最悪、死に至る脳卒中。突発的な症状から患者の命を守るべく、横浜新都市脳神経外科病院では24時間365日「断らない医療」を実践。救急搬送数は年間で約8,000件※に及ぶ。

※… 2023年1月~12月

院内総出、ワンチームで 迅速かつ正確な治療を実現

 脳卒中で救急搬送された患者は、まずMRIなどの検査で的確に診断。適応時間内なら、「t︲PA(血栓溶解療法)」や「血栓回収療法」により早期回復も期待できる。

「一刻を争う脳卒中では、治療開始までの時間が重要。そのために当院では全スタッフ一丸で対応しています」と語るのは、森本将史院長だ。

 院長が進めてきた施策の中でも特筆すべきが、院内で定期的に開催し、正確で迅速な治療を追求する「アキュートストローク(急性期脳卒中)委員会」の設置だ。医師や看護師はもちろん、スタッフ総出でタイムロスの原因を綿密に検証。各部門ヘフィードバックし、模擬訓練も行う。

 地道な努力の結果、救急隊も含め迅速な連携が可能となり、搬送から治療開始まで一般的には60分以内が理想とされる中、年々その時間を短縮。画像検査も含め中央値「20分台」を実現。さらに来院から再灌流まで60分以内という迅速化を果たしている。

血管内治療と開頭手術の “二刀流”で治療に臨む

 脳卒中の診療では、最初に手術か経過観察かの適切な判断が要となる。同院には熟練の医師10名が在籍し、手術の判断はもちろん、血管内治療と開頭手術の両方に精通し、適宜使い分けている。

 例えば、くも膜下出血のリスクがある「未破裂脳動脈瘤」には、瘤の大きさ・形状・発症部位、患者の年齢や健康状態などを熟慮する。高齢なほど動脈硬化も進むため、脳に直接触れず手術時間が短い血管内治療を優先して提案。極細のカテーテルを高い技術で用い、患者が麻酔で眠っている間に治療を完遂する。

 脳動脈瘤が5㍉以上の場合は「フローダイバーター」を選択。病変のある正常血管に網目の密なステントを設置し、瘤への血流を抑制する。脳動脈瘤の薄い壁に触れずに済み、破裂リスクはより低減。万が一瘤が固まらない場合も考慮しつつ、手術プランを入念に確認した上で臨む。

「手術のポイントは“患者さん最優先”。プロセスの迅速性は追求しつつも、術中は“ゆっくり、着実に”を意識し、常に慌てず冷静な対処を心掛けています」(森本院長)

  • フローダイバーターステント治療
    (左)脳動脈瘤のある位置に
    (中)網目の細かいステントを留置し、
    (右)瘤へ流入する血液量を減少。徐々に血栓化させて破裂を防ぐ
  • 血栓回収治療
    発症から6時間以内の血栓による脳卒中に適用。脳血管内にカテーテルを挿入し、血栓をからめ取ったり、砕いたりする器具で直接除去する
    (左)血栓で詰まった血管
    (中)カテーテルで血栓除去
    (右)血流が回復

脳卒中特化の設備を揃え 集中治療室も30床へ拡充

 脳卒中治療のエキスパートによる診療後は、早期回復を目指して超急性期から回復期、慢性期までワンストップで対応可能だ。設備も年々拡充しており、MRI室に隣接したカテーテル室3室をはじめ、急性期の脳卒中に特化した集中治療室「SCU(Stroke Care Unit)」は国内屈指の27床。2024年度中にはさらに30床へ増やす予定だ。

 回復期リハビリテーション病棟も60床を備え、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士など多職種のスタッフが手術翌日から機能回復をサポート。心原性脳塞栓症の再発予防にも常勤の循環器内科医との連携で万全を期しており、退院後や脳ドックで経過観察となった患者にも継続的なフォローを欠かさない。

 院長の「笑顔と挨拶、地味な仕事を大切に」というモットーがあらゆる面に浸透している同院。患者に寄り添う診療を地道に実践する“チーム横浜新都市”は日々、地域医療の中核を担い続けている。

文/飯塚哲

  • 手術開始まで20分台、再灌流まで60分台を実現
    60分以内が理想とされる搬送から治療開始までの時間は、年々短縮し中央値「20分台」に至った。再灌流までも「60分台」という迅速化を実現している
  • 脳卒中ケアユニット「SCU」27床は国内屈指
    急性期の脳卒中に特化した集中治療室「SCU」は現在27床で、2024年度中 に30床へ増床予定。1院あたりでは県内、国内でも屈指の設置数となっている

院長

森本 将史

日本脳神経外科学会認定
脳神経外科専門医
日本脳神経血管内治療学会認定
脳血管內治療専門医

医療新聞社
編集部記者の目

記者は今回初めて訪れたが、国道246号沿いの立地で、周辺は自動車が引っ切りなしに行き交い、地域の動脈にして要所という印象を得た。記事中で触れたとおり、日本でトップレベルの脳卒中治療を提供し、脳卒中ケアユニット「SCU」も国内屈指の27床(2024年度中には30床となる予定)を揃える。通常は大規模病院でも10床程度だそうで、脳神経外科に特化した病院ならでは。グラフでも示した「D2P(ドア・トゥ・パンクション)タイム」も、一般的には60分ぐらいが理想とされる中で、半分以下の20分台を実現しているのは、まさに面目躍如だろう。とにかく一刻を争い、かつミスの許されない脳卒中治療に取り組むスタッフの姿は、一糸乱れぬ磨き上げたチームワークを見せるF1のピットクルーとも重なるように感じた。

Information

横浜新都市脳神経外科病院

ホームページ

【診療科目】脳神経外科、脳神経内科、整形外科、内科、循環器内科、リハビリテーション科、麻酔科(里見憲昭)、救急科

【診療時間】■月~金9:00〜 / 14:00~ ■土9:00~

【休 診 日】土曜日午後、日曜日・祝日 ※救急は24時間受付

〒225-001
神奈川県横浜市青葉区田町433

TEL. 045-911-2011(代表)