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国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

QST病院

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がん死ゼロ社会を目指し、
重粒子線治療をリード

病巣に線量を集中させ、治療の負担軽減を実現

 がん治療で最近、存在感を増しているのが放射線治療で、症状や患者によって、高い効果が期待でき、患者負担を抑えた治療として注目が集まっている。

 その放射線治療に特化した医療機関が、QST病院で約60年の歴史を有している。特筆されるのは放射線治療の中でも重粒子線治療だ。1994年の臨床試験開始から、2020年9月までに1万3000人を超える治療実績を積み重ねており、国内のみならず世界の重粒子線治療を名実ともにリードしてきた。

 従来のX線やガンマ線による放射線治療は、がん病巣を超え、反対側まで通り抜けていく性質があるため、周囲の正常な組織を傷める危険性がある。一方、重粒子線治療は、目的の病巣で止まり、最大のエネルギーを放出する特徴を持っている。つまり、従来の放射線治療よりも病巣に線量を集中させることができ、正常な組織への影響を軽減した治療が可能となった。

 辻比呂志院長は、「一般の放射線よりもがん細胞への殺傷効果が2~3倍と高く、短期間での治療が可能になりました」と話す。早期の肺がんや肝臓がんの場合では、1~2日で治療を終えることもあるという。

 重粒子線治療はすでに、手術困難な骨軟部肉腫、一部の頭頸部がん、前立腺がんに保険適用されている。このほか肺がん、食道がん、肝がん、腎がんなど多くのがんでも先進医療として治療が進められている。治療が難しいとされる膵がんに対しても良好な結果が得られているという。

 一方で辻院長は「現状では設備自体が大きいため、小型化を図り費用も安くなれば、もっと多くの医療機関に導入され、患者さんも利用しやすくなるでしょう」と普及を図るうえでの問題点を指摘する。

 そこで期待されているのが開発中の次世代装置、量子メスだ。現行機と比べはるかに小型化し、一般の重粒子線治療に使われている炭素と重量の異なる酸素やネオンなどを組み合わせたマルチイオン照射と呼ばれる照射法を採用。病巣に対してより効果的な治療を目指している。

 近い将来、がん治療の主役となる可能性を秘めている重粒子線治療は、同院がけん引役となり、さらなる進歩を遂げていくことだろう。

院長

辻 比呂志

つじ・ひろし●1982年、北海道大学医学部卒業。筑波大学臨床医学系講師、放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院医長、放射線医学総合研究所臨床研究クラスタ重粒子線治療研究部長、同副クラスタ長を経て、2019年より現職

医療新聞社
編集部記者の目

 がん治療の進化は目覚ましい。手術、薬物療法、放射線の3大治療法のうち、現在注目されているのが放射線治療のなかの重粒子線治療。ピンポイントでがん病変をとらえることができる画期的な治療法だ。がんによっては手術ができない、また手術を希望しない患者もおり、そのような場合に重粒子線治療にかかる期待は大きい。まだまだ設備の普及や対象となる疾患の拡大などに改善・研究の余地があるとされるが、この治療法の発展を患者、医療関係者も待ち望んでいる。いずれ、がんに対する治療法が大きく変わることも、もはや夢物語ではないことを感じさせてくれる取材だった。

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