• 鹿児島県

米盛病院

充実した設備とチーム医療で
脳卒中・心血管疾患の救急にも尽力

徹底した救急医療体制で地域社会に貢献

 1969年に「米盛整形外科医院」として鹿児島市に開院し、整形外科の単科医療機関として地域に根ざしてきた米盛病院。2014年の病院移転・新築を機に、「一秒を救う。一生につなぐ。」というコンセプトのもと救急医療に注力し、脳神経外科・循環器内科・心臓血管外科といった診療科も開設して機能を拡充、数々の症例に対応している。

 県のドクターヘリを補完する役割も担う民間救急ヘリ「レッドウイング」や、救急車・ヘリからダイレクトに搬送患者を受け入れ、そのまま迅速に検査から初期治療・緊急手術まで行えるようCTや血管造影装置を設置した「ハイブリッドER」など、全国有数の救急医療体制を有している。

  • 離島が多く湾が広い鹿児島では民間救急ヘリが活躍
  • さまざまな機器が集約されたハイブリッドER

超急性期脳梗塞もチームで迅速に診療

 同院は24時間体制で患者を受け入れている。患者が到着してからt-PA静注療法(静注血栓溶解療法)開始まで30分以内、脳血管内治療開始まで60分以内という目標を立て、20年に達成することができた。この速さを実現できた理由は、まず脳神経外科だけでなく救急対応の医師全員がt-PA静注療法を行えるようにしていること。次に医師だけでなく、診療に関わる看護師・診療放射線技師・臨床工学技士を含めた多職種スタッフ全員が患者の病態・治療に関して共通認識を持ち、日々実践を重ねていくことにあるという。

 「軽症でも重症でも、検査・治療の手順そのものはほぼ同じですから患者さんの状態を素早く判断して、それをスタッフ全員が認識しています。これが治療の迅速性を損なわない重要なポイントだと思います」と井上泰豪医師は語る。

 また迅速性だけでなく正確性・安全性を高めるために、搬送されてきた症例について医師だけでなく、多職種チームでのカンファレンスを行っている。この際にも、全員が共通認識を持っていることで、修正点を見出すこともスムーズになり、より良い診療を提供できるよう循環できているという。

ハートチームが機能して多様な心臓・血管疾患に対応

 心血管疾患の急患対応に関しては、循環器内科や心臓血管外科の医師はもちろん、看護師、医療技術者、事務員が一丸となったハートチームを編成。多職種が連携して、患者個々の状態や希望に配慮した治療を提供している。

 心臓血管外科では、弁膜症のみならず、冠動脈バイパス手術においてもMICS(低侵襲心臓手術)を取り入れている。さらにMICSの中でも、より低侵襲手術と考えられている人工心肺装置を使用しない低侵襲オフポンプ冠動脈バイパス術にも対応している。

 渡邊隼医師は「MICSは胸骨を切り開きませんから、小さな切開創で施術でき、創部感染のような合併症のリスクも低減されます。入院期間も短縮され、退院後の生活に関する制限は軽減され、QOL向上が期待できます。しかし、緊急性の高い心筋梗塞の患者さんなどは、救命を最優先と考えて、胸骨正中切開アプローチを選択します。あくまでも患者さんの状態にあわせて、アプローチ方法を慎重に選択しています」と語る。

 循環器内科では、経皮的冠動脈インターベンションによって、冠動脈の拡張や心筋梗塞の治療を行っている。心筋梗塞では、ほとんどの症例で病院到着から再度血流を得るまで60分以内の治療を達成している。これは、CT検査とカテーテル検査の両方を一室でできるハイブリッドERの存在が効果を発揮している。下髙原医師は次のように語る。

 「患者さんの声に耳を傾け、疑わしい症状がある場合は、早急にカテーテル検査を行っており、その検査で心筋梗塞が発見されるケースも多いです。迅速な治療が術後QOLにも大きく影響しますので、お気軽にご相談ください」

 また、心血管疾患全般にも幅広く対応している。不整脈の治療では、患部を焼灼するカテーテルアブレーション治療を用いている。「当院では3Dマッピングシステムを完備しています。これは撮影したCTのデータを取り込んで、患者さんの心臓を立体画像で見られますので、患部を的確に捉えることができます。また治療中の患者さんの放射線被爆を大幅に低減します」と田上和幸医師は話す。

 地域に必要とされる医療の提供を通じて、多くの方々の「命と人生に向き合う病院」として、同院は今後も地域医療に貢献していくだろう。

  取材・文/牧野晋一

脳神経外科

井上 泰豪

いのうえ・やすひで●日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医ほか

心臓血管外科

渡邊 隼

わたなべ・しゅん●三学会構成心臓血管外科専門医認定機構認定心臓血管外科専門医ほか

循環器内科

下髙原 淳一

しもたかはら・じゅんいち●日本循環器学会認定循環器専門医ほか

循環器内科

田上 和幸

たのうえ・かずゆき●日本循環器学会認定循環器専門医ほか

医療新聞社
編集部記者の目

1969年鹿児島県に整形外科の単科診療所として開院した米盛病院は、50年以上に渡り、地域の整形外科医療に対して大きく貢献してきた。2014年の病院移転・新築を機に、救急医療にも注力。離島の多い鹿児島県とあって、民間救急ヘリ「レッドウイング」を保有し、しかも病院独自の救急救命ダイヤル#7099を設定していて、地元住民にとっては心強い存在だ。CTや血管造影装置を設置し、初期治療・緊急手術まで行える「ハイブリッドER」がある病院は、全国でもまだ珍しい。急性期患者でも、すみやかに対応できる救急病院といえる。

Information

米盛病院

ホームページ

【診療科】救急科/循環器内科/心臓血管外科/血管外科/脳神経外科/形成外科/内科/外科/
消化器内科/消化器外科/呼吸器内科/心療内科/放射線科/産婦人科/リハビリテーション科/
リウマチ科/麻酔科(岩永康之)/整形外科
【病床数】506床
【診療時間】9:00~12:30/14:00~18:00
【休診日】日・祝
※診療日時および受付日時は診療科により異なります。
※急患は24時間・365日受け付けています。

〒890-0062
鹿児島市与次郎1丁目7番1号

TEL.099-230-0100(代表)
【24時間救急相談ダイヤル】
#7099