神経難病の治療を重視するために誕生

　2021年12月、山口県下関市に神経筋疾患の診療を重視した病院が開設された。それが脳神経筋センターよしみず病院だ。22年４月には、山口大学医学部神経・筋難病治療学講座教授で、脳神経疾患治療のスペシャリストである神田隆医師を脳神経筋センター長として招聘。川井元晴副院長とともに、盤石な体制で脳神経疾患の診療にあたる。

　リニューアル移転して半年、東は広島県西部から西は北九州まで幅広く患者が来院する。近県には、脳神経内科に特化した病院は少なく、今後もエリアの拡大が見込まれる。

急性期から終末期まで切れ目のない医療

　日本神経学会認定神経内科専門医3名が常勤。学会の教育病院でもあり、若手の脳神経内科医を育てて社会に還元していくという大きなミッションも持っている。このような役割は、全国的に見て公的医療機関が選ばれることが多いが、私立病院ならではの自由な発想を持って取り組んでいる。

　神経難病からコモンディジーズ（日常的に高頻度で遭遇する疾患）まで、幅広い神経筋疾患に対応できる病院として知られ、研修医や専門医を目指す方のキャリアアップの病院になる点も大きな特色だ。

　さらに、設備・機器の刷新にも積極的に取り組み、RI機器やＭＲＩも画像が鮮明な最新の機器を購入した。パーキンソン病・本態性振戦の新しい治療機器も導入、MRガイド下集束超音波治療器に対応した装置で診断が行える予定だ。

「脳神経疾患は見慣れない症状や、聞きなれない病名が多い。患者さんは、どこを受診したら良いのか不安に思うこともありますし、日常生活に支障が出てくることもあるでしょう。不安を抱えながら生活する患者さんに最適な、急性期から終末期まで切れ目のない診療ができる病院に生まれ変わりました。気軽に来院していただけたらと思います」と川井副院長は熱く呼びかける。

　脳神経筋センターは、神経難病のほか、末梢神経・筋肉などの神経に関わるものはすべて診療をしている。アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめ、脊髄小脳変性症やプリオン病、多発性硬化症、筋ジストロフィーなどの希少疾患にも対応が可能だ。

「脳神経筋疾患には、さまざまな種類があり、たくさんの患者さんがいます。慢性期の患者さんは20年、30年と疾患を共にすることが多いのが現状です。20年前とは違い、世界中のメガファーマが、神経難病の治療薬開発に本気で取り組んでおり、新薬が年間7～8種類ほど登場します。それぞれの患者さんに応じた治療ができるような、世の中に即応した医療体制を作っていくことが当院の使命です」と神田医師は語る。

• 最新のMRI装置で、MRガイド下集束超音波治療器（FUS）に対応した装置

難病患者に適切な充実したリハビリテーション

　リハビリテーションの充実も特徴のひとつ。通常の回復期リハビリテーション病院は、骨折や脳卒中後の機能回復を目的としているが、同院は回復期だけでなく、神経難病、パーキンソン病などのリハビリもフォローできる。日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医を中心に、言語聴覚士（ST）10名を擁するなどリハビリスタッフも多数集結。各病棟担当のOP（作業療法士）・PT（理学療法士）・STが決まっており、言語や嚥下のリハビリも可能で、患者一人ひとりに沿ったリハビリができる。

　さらに、医師とスタッフとのチーム医療も充実。看護師と薬剤師、栄養士、リハビリスタッフ、そして地域連携室の医療相談員、ケアマネジャーと、多職種にわたって緊密なコミュニケーションをとっている。カンファレンスは、それぞれの職種で頻繁に行っており、病院全体で情報を共有している。

「発展途上の病院ですが、10年後には西日本の拠点になるよう取り組んでいます。脳神経内科医が少ない地域ですので、的確な医療が受けられない患者さんも多数いると思います。ですので、そんな患者さんのためにもしっかり頑張っていかなければと考えています」と神田医師は力を込める。