【疾患センター解説】日中の眠気や倦怠感、心臓などへの合併症を防止する 睡眠・呼吸障害センター

【疾患センター解説】日中の眠気や倦怠感、心臓などへの合併症を防止する 睡眠・呼吸障害センター

日本人の約5人に1人が悩みを抱える睡眠・呼吸障害。健康的に過ごすためには良質な睡眠が大切です。睡眠の質がQOL(生活の質)を左右します。複数の科のスペシャリストが睡眠・呼吸障害に対する専門的な診断に基づく治療を提供しています。
睡眠・呼吸障害センターとは
複数のセクションのスタッフが協力して、睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を中心とした睡眠呼吸障害の診断と治療について、包括的な診療を提供。
複数の診療科にまたがる専門外来を1つに集約
睡眠障害は約60種類以上もの睡眠関連疾患に分類されるため、診療科が多岐にわたります。
夜眠れない、中途覚醒、早朝覚醒などの症状(不眠症)は内科、心療内科、精神科、睡眠不足や睡眠リズムに問題がないのに日中の過度の眠気や居眠り(過眠症)にお困りの場合は、神経内科や精神科、いびきや無呼吸と日中の眠気が問題となる場合(睡眠呼吸障害)は耳鼻科、呼吸器内科、循環器内科が専門になります。
そのすべての分散していた専門外来を1カ所に集約したのがセンターです。
当院の場合でいえば、主に診療しているのは SASを中心とした睡眠呼吸障害で、担当する診療科が、循環器内科と呼吸器内科、耳鼻科の医師に加えて、臨床工学技師、睡眠脳波を解析する臨床検査技師など技師のサポートが重要となります。複数の職種で診療にあたっていることも大きな特徴です。特にSASでは、耳鼻科医による鼻とのどの診察を行います。さらにSASでは高血圧、冠動脈疾患、不整脈、心不全などの循環器疾患を合併しやすく、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎などの呼吸器疾患に併発する場合もあり、循環器内科や呼吸器内科の医師も積極的に診療に携わっています。
SASは、早期発見と治療により、対処可能です。持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が主軸の治療になります。もう 1つの治療がマウスピースです。これは歯科口腔外科の医師に依頼して作ってもらうので、連携を構築するためにもセンターが有用です。

睡眠障害の分類

睡眠呼吸障害とは
長時間にわたって睡眠が妨げられる疾患であり、夜眠れない、仕事中や勉強中に居眠りをする、集中力が低下するなどが挙げられます。
注意力や集中力の低下につながる
睡眠呼吸障害とは、睡眠中に異常な呼吸パターンまたは呼吸停止が出現して、換気ができなる病態の総称です。睡眠の質が悪いと、眠気や疲労感がヒューマンエラーに基づく事故につながることもあります。
子どもも、夜型の生活は睡眠時間の減少や睡眠の質の低下につながり、成長・発達の遅れ、注意力や集中力の低下をもたらします。
いびきの原因は口蓋垂の周囲の閉塞
睡眠呼吸障害は SASといわれ、一般的に知られているのは上気道が閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸です。主な原因は肥満です。肥満のほか、首が短い、顎が小さい、舌や扁桃が大きいことなどによります。年齢を重ねるにつれて増えていく傾向があります。脂肪が首回りにつき、舌やのどの粘膜下にも脂肪が沈着してきますので、主に口蓋垂(のどちんこ)の周囲ののどが狭くなり就寝時に横になると舌根沈下を起こしてしまいます。口蓋垂の周囲が閉塞し、粘膜同士が振動し、いびきが出るようになります。
日本人は、痩せ型の方でも、肥満の人と同じぐらいの重症度のSASの人もいます。下顎が小さく舌が後ろに位置するため、気道が狭くなりやすく、いびきを引き起こします。
子どもも例外ではありません。子どもの場合は、口蓋扁桃、アデノイドが原因で、閉塞性無呼吸が発生し、その結果、寝起きが悪いなどの睡眠障害を引き起こします。また、アレルギー性鼻炎の鼻づまりも要因のひとつです。口呼吸の癖やアレルギー性鼻炎などで鼻呼吸ができないと、口周囲の筋肉の弛み、上下の顎の骨の発達不良、そして歯並びなどへも影響します。鼻炎の治療や口周囲の筋力トレーニングにより口をしっかり閉じて、鼻呼吸ができるようになれば、いびきが解決することもあります。正しい呼吸習慣により、睡眠の質も良くなり、顎の発達は順調に進み将来のSASの予防にもつながるため、最近は子どもの頃からいびきを直すことに重点を置くようになってきています。

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

治療法について
対症療法から手術療法、保険適用になった最新の治療法も登場
最新の治療が保険適用に
睡眠検査で睡眠中のいびきや呼吸の状態を調べます。自宅で行う簡易検査もありますが、より精密な1泊入院での終夜睡眠ポリグラフ検査をお勧めします。体に約20種類のセンサーを取り付けて、呼吸状態や体の動き、足の動きなどを調べます。お子さんへの検査も対応しています。
中等症以上の治療では、持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)を行います。鼻の周囲に密着させたマスクを介して持続的に圧力のかかった空気を供給し、舌の付け根の部分がのどへ落ち込まないようにして気道の閉塞を防ぐ治療です。
患者さんは医療機器を家に持ち帰り、寝る前に自分自身でマスクを着けて機器を使うことになりますが、事前に使い方の指導がありますので心配はいりません。主に軽症の方を対象に、マウスピースを用いることもあります。睡眠中の下顎の位置をやや前方に移動した状態で保ち、のどのスペースを確保します。患者さんに合わせて歯科口腔外科で作成します。
この他、特に子どもの睡眠時無呼吸は、口蓋扁桃、いわゆる扁桃腺や喉の奥のアデノイドの肥大によることが多く、この場合手術が有効です。
また、鼻詰まりがひどい場合は寝ている間に口呼吸となり、下の付け根が喉に落ち込んでいびきを引き起こします。
鼻の疾患がある場合も、CPAP療法やマウスピースの効果を得にくく、鼻科手術が効果的です。このほか、最新の治療として、舌下神経電気刺激療法があります。呼吸と同期して舌の筋肉を収縮させ気道を開ける仕組みです。CPAP療法が適さない患者さんなどが選択できる治療です。保険適用にもなり注目を浴びています。

睡眠時無呼吸の主な治療法

※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載
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