【大動脈瘤・大動脈解離】名医や病院ランキングを紹介


【大動脈瘤・大動脈解離】名医や病院ランキングを紹介

大動脈瘤・大動脈解離について
心臓から拍出された血液を全身に送る大動脈は時として拡張し大動脈瘤となり、破裂することがあります。また高血圧にさらされた大動脈壁は構成する内膜と外膜が中膜のレベルで剥がれる大動脈解離が起こることもあります。いずれの場合も発症してからの治療が遅れると致死率が著明に高くなります。
疾患の特徴
上行大動脈解離は無治療の場合、2日以内に半数が死亡
大動脈は直径が約2.5cm。体内で最も太い血管です。心臓の左心室が収縮して、力強く放出した血液を受け取り、肺以外の全身の組織に送り出します。
大動脈瘤は血管壁の脆弱化した箇所がこぶのように通常の2倍以上、病的に膨らんだ状態をいいます。原因は主に動脈硬化であることが多いです。自覚症状がないまま、年間約1から2mmのペースで肥大します。大動脈瘤は胸部と腹部に発生し、腹部大動脈瘤が他の理由で受けた超音波検査などで見つかるケースが多く、それに追加された検査で胸部大動脈瘤が見つかることもあります。大動脈瘤が破裂すると、患者さんの大多数は医療施設へ到着する前に死亡。生存状態で着いても約半数が命を落とします。
大動脈瘤が血管壁の異常拡張なら、大動脈解離は血管壁の亀裂です。
大動脈の血管壁は血流に接する内膜、中膜、外膜から成る三層構造。大動脈解離は何らかの理由で内膜が裂けて血液が流れ込み、中膜が膨張して偽腔という空間を形成、外膜から引き剝がされる病態です。大動脈は大きく心臓から出て上方に向かう「上行大動脈」と、「弓部大動脈」から腹部へ向かう「下行大動脈」に分かれ、大動脈解離は上行大動脈が裂ける「スタンフォードA型」と下行・腹部大動脈が裂ける「スタンフォードB型」に分けられます。
特に、心臓を出てすぐの上行大動脈で解離が起き、治療せず放置すると、1時間に1%ずつ死亡率が上がり、2日以内に半数が亡くなります。ほかには外膜の破裂、大動脈から分岐する動脈への血流障害、大動脈弁の破綻による血液の逆流、心不全などを起こします。
ほとんどの場合、急性の大動脈解離は前胸部や肩甲骨間が突然の激痛に襲われます。今までに経験したことのないような激痛と形容されたり、胸から背中や腰に移動する痛みと言われております。発症は冬場に多く、午前6時から正午までの午前中に集中する傾向があります。

大動脈瘤

主な治療法
拡張した血管を置き換える人工血管置換術
大動脈瘤はCT検査により動脈瘤の形状や大きさ、発症部位を詳細に調べます。瘤が小さければ、経過観察。手術が必要かもしれないと疑われた場合、造影CTによる検査を行います。大動脈瘤の大きさが5cmを超えていた場合、より厳密な経過観察のもと手術を考えなければいけません。
主な治療は開胸・開腹手術か、カテーテルによる、ステントグラフト内挿術です。後者は大動脈瘤ができた箇所にステントグラフトという人工血管にバネ状の金属を取り付けた器具を留置、瘤を内側から塞ぎ、瘤の壁面への血圧を避けて破裂を防ぎます。カテーテルを利用するため、傷が小さいこと、術後の痛みが少なく、手術時間と入院期間が短いのがメリットです。ただし、大動脈瘤そのものを切除しているわけではないので、退院後は厳密な大動脈瘤計の計測が必要です。その他ステントグラフトの位置のズレ、破損に注意しなければなりません。
大動脈解離は起こる場所によって2種類に分類され、上行大動脈に解離があるA型と上行大動脈に解離のないB型に分けています。A型は心臓を包む膜の中の出血で心臓が動かなくなる心タンポナーデ、心筋梗塞、大動脈弁閉鎖不全、急性心不全を生じやすくなるのが特徴。解離して損傷した血管を人工血管に置き換える緊急手術が必要です。心臓を出てすぐの上行大動脈、もしくはその先の脳への血管を分岐する弓部大動脈を含む箇所までの人工血管置換術などが選ばれます。
手術は全身麻酔下で開胸により実施。人工心肺装置による体外循環を行い、特に脳や神経を保護する為に体温を冷却し、低体温循環停止下による人工血管置換術が行われます。
対してB型は基本的には保存的加療が選択されます。具体的には安静と厳密な血圧管理を約2週間行います。ただしB型であっても大動脈が破裂したり、解離の進行によって臓器血流が不足して臓器に障害があれば緊急手術が必要です。
胸や背中に激しい痛みが走った場合、大動脈瘤の破裂や解離の可能性があります。まずは救急車を呼んで診断・治療が遅れないよう、症状の詳細を救急救命士や医師に伝えてください。
治療法の種類
手術
◎人工血管置換術

人工血管置換術

カテーテル治療
◎ステントグラフト内挿術
太ももの付け根の動脈などからカテーテルを使ってステントグラフトを挿入し、大動脈瘤の壁を裏打ちすることによって大動脈瘤の破裂を防ぐ治療法。ステントグラフトは人工血管の中にバネ状のステントが埋め込まれたもの。これを挿入することで、大動脈瘤の部分に血液が流れるのを防ぎ、破裂のリスクを軽減する。胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)がある。

ステントグラフト内挿術

医療機関選びのポイント
POINT1 治療実績の多い医療機関
大動脈瘤の治療において欧米では手術件数の多いハイボリュームセンターの方が治療成績が良いということが分かっている。診療先を自由に選択できる日本に置き換えれば大動脈瘤の治療は豊富な経験と技術を持つ医師と高度な設備を備えた医療機関で行うことが重要。治療実績が多い病院は大動脈瘤の治療に精通した医師と手術や治療に必要な設備が整っているため、安心して治療を受けることができる。大まかな目安として、胸部大動脈手術、ステントグラフト内挿手術が年間それぞれ100件以上、合計で200件以上行っている病院であれば十分に実績のある病院といえる。大動脈解離の場合、突然に発症することが多く、救急搬送されるため原則的に受診する医療機関は選べない。
POINT2 大動脈疾患の専門医がいる
大動脈瘤は心臓血管外科・循環器内科の医師が診察・治療を実施。大動脈疾患に特化している医療機関であれば、大動脈瘤の最新の治療法やリスクについても詳しく、患者一人ひとりに適した治療を受けることができる。
POINT3 セカンドオピニオンを聞きに行く
大動脈疾患に対する治療は近年目覚ましく発展しており、死亡率も大幅に低下しているが、いまだに適切な治療を行っても一定の死亡率が発生する重篤な疾患である。セカンドオピニオンを聞くことは患者の権利であり、遠慮せずに行ってほしい。自分の信頼できる医師や医療機関を積極的に探し、納得できたところで治療を受けるべきである。
※『名医のいる病院2024』(2023年12月発行)から転載

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