【疾患センター解説】心臓外科と循環器内科が一致協力して心疾患を治療する ハートセンター

【疾患センター解説】ハートセンター:心臓外科と循環器内科が一致協力して心疾患を治療する

虚血性心疾患や心臓弁膜症、不整脈、先天性心疾患と心臓を襲う病気は枚挙にいとまがありません。しかも、どの疾患も、生命に直接関わるものばかりです。これらの疾患に対して、心臓外科と循環器内科が互いの叡智を結集して治療にあたるのがハートセンターです。
ハートセンターとは
循環器内科と心臓外科が一致協力して、心臓に関する難症例を治療します
合同カンファレンスを行うなど整った協力体制
心臓疾患は、患者さんの生命維持に直接関わるものが多く、一刻を争う事態に陥ることがあります。また今は軽度でも、悪化したり、合併症を引き起こしたりして、重篤な状態になることも珍しくありません。その一方で、疾患ごとにさまざまな治療法が開発され、難治症例への対応も以前よりかなり進んできました。
しかしながら、心臓疾患の治療には繊細さが求められることに変わりはなく、また治療法の適用を誤ると容態を悪化させることになりかねません。
心臓外科手術の様子
心臓外科手術の様子
そこで心臓外科と循環器内科(心臓内科)が一致協力し、互いの得意分野を活かしながら患者の治療方針を決め、共に治療に参加し、その経過を見守るシステムを採用する医療機関が増えてきました。
これがハートセンター(心臓病センター)と呼ばれるものです。
ハートセンターを構成するメンバーは、医師だけではありません。看護師やコメディカルといった、それぞれの診療科に属するメンバーがそのまま全員ハートチームとなります。そしてメンバー全員が共通の認識を持ち、患者の治療に携わることが最も重要なので、患者の治療方針の検討・決定を行うカンファレンスにも参加します。
また、循環器疾患をもつ患者さんの再発予防、あるいは新たな循環器疾患の初発予防のために、心臓リハビリテーションにも深く関わっています。
カンファレンスの様子
カンファレンスの様子
心臓疾患とは
胸が締め付けられるような、圧迫感のある痛みを感じます。場合によっては、背中、肩、腕、あごなどにも痛みが出ます
刺すような胸痛を感じたら迷わず医療機関へ
虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)は、心臓の筋肉に必要な栄養や酸素を運ぶ血管(冠動脈)が細くなったり詰まったりすることによって、心臓に十分な血液が送られなくなることによって起こります。胸が苦しくなって痛みや絞めつけられるような症状が出ます。広い範囲に症状を感じるのが特徴です。
虚血の状態が長く続くと、心臓を収縮させる心筋の動きが悪くなるので、心臓のポンプ機能にも影響が出てきて、息苦しくなるなど心不全の症状が表れてきます。重症になると、血圧が下がってショック状態となり、全身が虚血状態になってしまいます。
心臓弁膜症になると、動悸や息切れ、胸の痛みなどの症状が出てきます。これらの症状はゆっくりと進行していくため、自身で活動範囲を狭めてしまい、症状に気がつかない場合があります。しかし無症状でも、心臓には負担がかかっています。重い症状には、めまいや失神などを伴います。
大動脈弁狭窄症は大動脈弁が開かなくてはならないときに完全には開かず、左心室から大動脈へと送られる血流が妨げられるため左心室に負担がかかります。また、送り出される血液量も少なくなるので、心筋も酸素不足に陥ります。特徴的な症状は、胸痛、失神、呼吸困難です。これらの症状が出たら突然死のリスクがあるので早期手術が必要です。

主な対象疾患

治療法について
心臓疾患の治療法は、薬物療法、カテーテル治療(PCI)、開胸手術の3つに大別されます
年々患者負担の少ない低侵襲な治療法が増加
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の治療は、軽度な場合は薬物投与によって症状を緩和し、経過観察を行います。冠動脈の血流確保を急ぐ場合は、カテーテル治療を行います。脚の付け根や腕、手首などの血管から、カテーテルという医療用の細く柔らかいチューブを差し込んで、冠動脈の一部の動脈硬化で狭くなった部分を治療する方法です。局所麻酔で行えるため、手術より患者さんの負担は少ないといえます。血管の狭くなった部分をカテーテルの先に取り付けたバルーンで血管を押し広げ、再び冠動脈が細くなるのを予防するため、ステントとよばれる器具を血管内に留置し、内側から補強します。金属アレルギーの患者さんや、カテーテルを通せない箇所に狭窄がみられる場合、カテーテルの挿入により、ほかの血管に影響が出ると判断される場合には、冠動脈バイパス術が検討されます。冠動脈の狭窄や閉塞に対し、その先に別の血管(グラフト)をつなげ、血液がその道(バイパス)を通るようにしてあげる手術が冠動脈バイパス術です。
大動脈弁狭窄症に対する治療法は、症状の進行度によって変わってきます。症状が軽い場合は、薬によって保存的治療が選択されますが、重症の狭窄に対する治療法は弁を取り換えることになります。
TAVIは重症の大動脈弁狭窄症に対する治療法で、開胸することなく、また心臓も止めることなく、カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置します。

「TAVI」4つのアプローチ

※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載
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