【次世代を担う低侵襲手術の名医たち】
心臓手術:田端 実 医師

 

洗練されたチームで
より無駄のない手術を目指す

 
 
■取材
東京ベイ・浦安市川医療センター
心臓血管外科部長
田端 実 医師
 
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ボストンで出会ったMICSを心臓外科医としての強みに

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心臓手術における、目覚ましい進歩の一つとして、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁の疾患や心房細動などの手術の際に、大きく開胸することなく心臓にアプローチするというMICS(低侵襲心臓手術)が挙げられる。この手術をライフワークとして取り組んでいるのが田端実医師だ。心臓血管外科は、執刀医として独り立ちするまでに時間を要すると言われている。そうした状況の中、若くしてMICSを含めた心臓手術に精通し、現在42歳で年間300例を超える心臓手術を執刀している。MICSに注目した背景として、「世の中のニーズに応える心臓外科医になるには何が必要なのか」を考え続けてきたことがあったという。
 
4年間の外科研修後、心臓血管外科に携わってから2年目の2004年、29歳にして、アメリカ・ハーバード大学の病院に臨床留学をしたという田端医師。MICSに出会ったのはその時であり、患者の回復の早さと満足度の高さを目の当たりにしたという。
 
「印象的だったのが、フロリダなどの遠方からも患者さんがMICSを受けるために来ていたことでした。それを見て、ニーズの高さと共に、心臓外科医としての強みにもなると感じたのです」。以降、さらに高度なMICSを学ぶために、ニューヨークのコロンビア大学 やベルギーのOLVクリニックで研修を重ねていった。
 

MICSの最大効果を引き出すためチーム医療に力を入れる

33歳で帰国した後、年間の心臓手術件数日本一の病院として知られる榊原記念病院で、高梨秀一郎部長のもとMICSの体制・チームを立ち上げることになった。日本で実際にMICSを行ってみて、社会的にも重要な手術であることを痛感したという。「MICSで入院期間を短縮することで医療費が抑えられます。さらには、早期の職場復帰を促進することで、社会の生産性向上にも貢献できます。医療費の増加や、少子高齢化による労働力不足が問題になっている日本において、非常に重要な手術だと感じたのです」
 
一環として取り組んだのが、術後管理やリハビリテーションも含めたチーム力の向上だ。「いくら手術の結果が良くても、周術期管理をのんびりやっていて患者さんが早く退院できなければ、MICSの効果が十分に発揮されたとは言えません。洗練された手術に加えて、術前の準備や術後の治療、リハビリが合わさって、最良の結果を出せるのです」
 
そうした取り組みは、東京ベイ・浦安市川医療センターの心臓血管外科部長に就任した現在においても続いている。同院において田端医師は、麻酔科医、臨床工学技士、手術室看護師とともにMICSに習熟したチーム作りを行ってきた。現在では、国内外から多くの医師が手術とともに麻酔や人工心肺技術を見学に訪れるほどにまでなったという。同時に集中治療医や診療看護師、理学療法士と周術期管理のチーム作りを行い、MICSを受けた患者が4、5日、最短3日で自宅退院できる体制も整えている。
 
MICSだけでなく、循環器内科との連携のもと、TAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)などのカテーテル治療にも力を入れ、さらに身体への負担が少ない治療を目指している。根底にあるのは、できる限り無駄なく、シンプルな治療を実現させることだ。「外科医は手術で良い結果を出すことが最も重要だと考えています。結果が同じであれば、過程がシンプルで無駄がない方が間違いなく良いものになるのです」
 

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