~穏やかに暮らし、微笑んで最期を迎えるために~
自宅に来てくれるお医者さん

 
【寄稿】
 
一般社団法人
全国在宅療養支援医協会会長
 
ニッタ・クニオ
新田 國夫
 
日本外科学会認定外科専門医
日本消化器病学会認定消化器病専門医
一般社団法人日本在宅ケアアライアンス理事長
日本臨床倫理学会理事長
 

 

最期まで暮らしを支え患者と家族に寄り添う

 人が生きていくのは選択の連続ですが、私たちが生きる上で価値を求めるのは決して特別なことではありません。ありふれた日常の連続の中に幸福を見出すことは大切です。
 
 生きていくなかでさまざまな病気が目の前にやってきます。
 
 突然訪れる病気には急性期医療が必要です。急性期医療に求められるのは命を救い、病気を治すことです。この主体は病院になります。また、年齢を重ねるにしたがい徐々に体に変化をきたす病気があります。そうした病気に必要なのが慢性期医療です。
 
人生の最終段階を迎えるまでの生活、生き方は人それぞれです。誰もが元気に年を重ねている間は、日々の生活の満足度を高めたいと考えます。しかしながら病気になったら治す医療を受け、病気が治れば元の生活に戻ることを望みます。私たちの世界は多様で個性に富んでいますが、子どもから大人までどのような病気や障害を持ったとしても、住み慣れた地域で暮らしたいと思っています。そうした生活者に伴走し、寄り添うことを可能にするのが在宅医療です。人生のさまざまな段階であらかじめ自分の医療、介護について考えていくことが重要です。人生の設計を考えるなかで療養生活の準備もまた必要です。どんな医療、介護をどこで受けたいのか、それは自宅で可能なのか、自分の意思を明確にしておくことです。

 
 

 
 

 自宅で療養するにしても、現代では老老介護や一人暮らし世帯の増加で、家族による介護を望むことが難しい状況になりました。要介護になっても、自宅で療養するためには生活の確保、介護の確保、そして医療の確保が求められます。家族と同居されている方は少なくなっており、もしも親が介護の状況になれば自分の生活の中でどこまで介護ができるかどうか不安にさらされます。こうした家族の介護の負担をできる限り最小限に減らすことが可能であるかも、あらかじめ相談しておくことが求められます。自宅療養を相談する際、現在通院している診療所、いわゆるかかりつけ医が自分の意思に沿う医療機関かどうかを確認しておくことも必要です。患者さんの相談にしっかりのってくれる診療所であれば推薦できます。もしそれが難しいようであれば、地域包括支援センターや在宅医療相談窓口等でも相談することもできます。

 
 

 
 

24時間緊急往診に対応する診療所も

 在宅療養では24時間体制が確保されている診療所もあり、連携する医療機関、訪問看護ステーションで24時間の往診が可能です。さらに複数の医師が在籍し、緊急往診と看取りの実績を有する機能を強化した在宅支援診療所もあります。過去1年間の緊急往診の実績を5件以上、看取りの実績を2件以上有し、常勤の医師を3名以上配置している医療機関(地域で複数の医療機関が連携して対応することも可能)です。
 
 在宅医療は医師のみで行うことはできません。自院の看護体制がしっかりしているところや訪問看護との密接な連携をもった在宅医療体制では看取りまで可能です。しかしながら在宅医療の目的は看取りではありません。

 
 

 
 

 一般社団法人日本在宅ケアアライアンスでは在宅医療の概念が整理されました。そこでは人が生きることと生きがいを支えるチーム医療であると述べられています。さまざまな病気になっても暮らしを支えることが目的です。そのなかで出現する症状に、できる限り対応することが必要であり、その役割が求められます。医師と看護師、歯科医師、薬剤師、そして介護に関わるスタッフなど多職種のチームが対応し、患者やその家族が家で暮らし続けることを支援します。その結果が看取りです。緩和ケアの習熟したチームであれば、苦痛を取り去り最期まで住み慣れた場所での生活を支えることができるでしょう。

 
 


【寄稿】
 
一般社団法人
全国在宅療養支援医協会会長
 
ニッタ・クニオ
新田 國夫
 
日本外科学会認定外科専門医
日本消化器病学会認定消化器病専門医
一般社団法人日本在宅ケアアライアンス理事長
日本臨床倫理学会理事長
 
 

 

 
 

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