〜長引く足首の痛みと腫れに〜変形性足関節症の診断と治療

 
京都府立医科大学 整形外科
准教授
 
いこま・かずや
生駒 和也
 
 

変形性足関節症とは?

 足関節(足首)は、脛骨、腓骨、距骨の三つの骨で構成された関節です。関節の中では骨の表面は軟骨に覆われています。軟骨は関節が体重を支えたり、なめらかに動いたりする上で重要な役割を担っています。変形性足関節症は、足関節の軟骨が何らかの原因ですり減ってしまい、痛みや腫れを生じる疾患です(図1)。

 
 

 
 

初期には足関節に、起床時・歩き始めの違和感や、長時間歩行後の鈍痛を感じます。また正座をした際などに、足関節の内側に痛みが生じます。進行すれば、歩行時の痛みが増悪して歩きづらくなり、安静時にも痛みを感じるようになります。さらに、足関節全体の腫れや、内くるぶしを押さえた時の激痛が出現します。

 
 

変形性足関節症の原因

 明らかな原因がない「一次性」、関節リウマチや痛風などの関節炎に続発する「二次性」、足関節捻挫、足関節の骨折などの外傷に続発する「外傷性」に分類されます。わが国では「外傷性」は半数未満(45%)であり、「一次性」が比較的多い(28%)とされています。
 
変形は、足関節が内側に曲がる「内反型」と、外側に曲がる「外反型」の二種類に大別されます。わが国では内反型の変形が多数を占めます。内反型は、足関節捻挫などの外傷や、内くるぶしの骨の低形成などを原因として生じることが多く、外反型は扁平足が進行して生じることが多いです。

 
 

変形性足関節症の治療

 変形性足関節症の治療は疾患の進行度により異なりますが、初めて来院された時にはまず保存療法を試みます。保存療法としては、痛みが強い時期には、局所の安静、関節内注射、痛み止め投与などが行われます。強い痛みが治まれば、日常生活の指導、運動療法、装具療法を行い、痛みを更に軽減させ、日常生活動作(ADL)を改善することを目指します。日常生活の指導では、重労働、長時間の立ち仕事、スポーツなどを制限します。肥満があれば、食事指導や足関節への負荷が少ない運動指導によって、減量を目指します。運動療法では、下腿の筋力トレーニングを行います。ふくらはぎの筋肉が硬くなって関節の動きが悪くなっている症例では、足関節のストレッチングを行うよう指導します。装具療法では、炎症による痛みが強い時期には、支持性の強い足関節サポーターで安静を図ります。痛みが改善すれば、インソール(中敷き)を装着してもらいます。
 
 保存療法で3か月以上症状の改善を認めない場合には、手術療法を考慮します。進行度、年齢、活動性をもとに術式を選択し、痛みの除去とADLの改善、関節症の進行予防を目指します。

 
 

早期の手術療法(関節鏡)

 レントゲン画像で足関節の隙間が保たれており、脛骨と距骨の前方に、骨棘、増生した滑膜、関節内遊離体(関節ねずみ)などによる痛みがあり、腫れが軽度な場合には、関節鏡(内視鏡)での手術を選択します。関節鏡視下に、脛骨および距骨の骨棘(骨のトゲ)切除、遊離体摘出などを行います。足関節外側靱帯の損傷を認める場合には、足関節外側靱帯の修復・再建を同時に施行します。関節鏡による手術は、創も小さく、特にスポーツ選手では早期に競技復帰ができるため非常に有効です。

 
 

進行期の手術療法(下位脛骨骨切り術(LTO))

 レントゲン画像で足関節の内側を中心に隙間が消失し、75歳以下であれば下位脛骨骨切り術(LTO)を行います(図2)。LTOでは、足関節の5cm程度上方で脛骨を内側から水平に骨切りし、その間に人工の骨を移植する術式です。脛骨の関節面の内反によって、内側へ集中していた負荷を外側部へ移行させて、関節にかかる負荷を均等化します。痛みや腫れの改善と変形性関節症の進行阻止が期待できます。75歳以上であれば、下記の人工関節置換術や関節固定術が行われます。

 
 

 
 
 末期の手術療法(遠位脛骨斜め骨切り術(DTOO)、人工関節置換術、足関節固定術)
 
レントゲン画像で足関節の1/3以上で隙間が消失し、75歳以下で関節を温存したい場合には、遠位脛骨斜め骨切り術(DTOO)を選択します(図3)。DTOOは足関節の7cm程度上方で脛骨を内側から足関節外側に向けて斜めに骨切りし、その間に人工の骨を移植する術式です。LTOと同様に内側へ集中していた負荷を外側部へ移行するだけではなく、足関節の安定性を改善してぐらつきを軽減します。

 
 

 
 

 70歳以上で関節のアライメントが比較的良好な場合には人工関節置換術を選択します。足関節の人工関節では、脛骨と距骨の関節表面を金属やセラミック、ポリエチレンでできた人工足関節に入れ替えます。早期のリハビリテーションが可能で、速やかな除痛効果が得られます。
 
外傷後で関節面の破壊が著しい場合、比較的若年で活動性の高い場合、関節のアライメントが悪い場合には関節固定術を選択します。関節固定術とは脛骨と距骨をスクリューやプレートで固定する手術です。骨癒合が得られれば痛みがなくなり、高度の負荷にも耐えられます。関節を固定した後、足関節自体は動かなくなりますが、まわりの関節に約30度の可動域があるため、正座が出来る人もいます。

手術療法は高度の専門性を有する治療であるため、足・足関節の専門に治療する整形外科医がいる病院をおすすめします。

 
 


京都府立医科大学 整形外科
准教授

 
【寄稿】
いこま・かずや
生駒 和也
 
 

 
 

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