AIが切り開く画像診断の未来
~大腸内視鏡検査で自動的にがんを判別~
工藤 進英医師

 

がんの早期発見を目指し、より精度の高い検査の開発が求められている。一環として注目されているのが、AIの導入であり、医療におけるさまざまな分野で研究が進められている。そのうちの一つが、大腸内視鏡検査での活用だ。

 
■取材 昭和大学横浜市北部病院 消化器センター
    センター長

    工藤 進英 医師
 
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求められるがんの正確な診断

がんは、今や日本人の2人に1人が発症すると言われるようになっている。一方で、現在では治療技術の進歩に伴い、治るケースも増えている。そこからますます重要になってきたのが、いかにがんを早く見つけるかだ。ほとんどのがんは早期発見で根治が期待できる。さらには臓器を全摘せず、温存できる可能性が高まることも重要だろう。
 
ただ、がんの診断における問題の一つとして、精度が医師個人の経験・技量に大きく依存してしまうことが挙げられる。例えば、胃・食道・大腸がんに対して行われる内視鏡検査では、平坦・陥凹の病変を発見し、質の高い診断をするために十分な経験が必要となる。こうした問題を解決する方策として注目を集めているのが、近年発達してきたAIの活用だ。
 
現在、「ディープラーニング(深層学習)」という、大量のデータをコンピューターに読み込ませ、関係性や規則性を自ら分析させる手法が登場し、多分野への応用が期待されている。それは、医療においても例外ではなく、国内でもさまざまな研究が進められている。その一つが、昭和大学を中心とした医工産連携によって進められている、大腸内視鏡検査への応用だ。
 

大腸内視鏡検査とAIを組み合わせる

大腸内視鏡検査は、大腸がんを発見するための検査として極めて有用であることから、検査のための機器が進歩してきた。現在では、病変を500倍に拡大して観察できる超拡大内視鏡も登場し、細胞の核およびその動き、赤血球の流れまで内視鏡下で観察できるようになった。それにより、細胞を採取して病理検査を行うことなく、検査の段階で腫瘍か否かの判別さえ可能になったという。現在、工藤進英医師が取り組んでいるのが、この超拡大内視鏡とAIを組み合わせたシステムの構築だ。
 
このシステムは、超拡大内視鏡による診断画像を多数読み込んで細胞核の特徴を分析させ、がんの病理診断に役立てるというもの。ポリープに内視鏡を接触させると、0.2秒という短い時間で解析し、がんか否かを診断できるのだ。「このシステムで目指しているのは、内視鏡担当医師のスキルの優劣に関係なく、腫瘍か否かが正しく鑑別できるようになることです」。それにより、腫瘍を適切に診断して内視鏡治療に移り、大腸がんによる死亡を防ぐだけでなく、不必要なポリープの切除を抑えて医療費の削減にもつながることも期待できるという。
 

 

包括的に大腸がん診断を支えるシステムの開発を

この取り組みにおける、AIの基盤は既に完成しているという。日本医療研究開発機構(AMED)による支援も受けており、2017年度中に性能評価試験を実施する予定だ。18年度には医薬品医療機器等法に申請することを見据えているという。そして、このシステムはあくまでも第一歩だ。ポリープにおける腫瘍か否かの鑑別にとどまらず、大腸内視鏡による画像から病変を検出するAIシステムの研究開発も既に進めている。
 
将来的に目指しているのは、病変の検出から、腫瘍の鑑別まで、包括的に大腸内視鏡診断をサポートするシステムの確立だ。「そうした技術の開発は、産業の創出に貢献するという意味でも、社会に役立つのではないでしょうか」と工藤医師は語る。

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