社会復帰を支援する 回復期リハビリテーション病院

医療法人慈誠会 リハビリテーション統括センター長 小林 龍生(こばやし・たつお)

回復期リハビリテーション病院では、多職種で構成されるチーム医療により集中的リハビリテーションを実施し、急性期病院での治療後の障害や衰弱から患者さんの社会復帰を目指します。
疾患の特徴
早期回復を目指し回復期に集中的に実施
 リハビリテーション医療では原病の治療を行う急性期、治療後の障害や衰弱を回復する回復期、社会復帰後の生活期と、それぞれの時期に合わせた取り組みが行われます。 
 回復期リハビリテーション病院は主に回復期のリハビリテーション診療を行います。
 入院できる疾患が決められており、対象疾患は①脳神経疾患などの発症後または手術後、義肢装着訓練を要する状態、②骨折(大腿骨、骨盤、脊椎、股関節、膝関節、多発骨折)後または手術後の状態、③廃用症候群(外科手術、肺炎後)を有する状態、④神経、筋、靱帯損傷後の状態、⑤関節置換術後の状態、⑥急性心筋梗塞の状態です。入院期間はそれぞれ最長①150日、②90日、③60日、④90日、⑤90日、⑥90日と決められています。以前、入院は発症や手術後2カ月以内とされていましたが、2020年度から「発症からの期間を問わない」と緩和され、急性期病院での治療が2カ月以上かかってしまった患者さんも入院できるようになりました。
 原病により生じた障害や衰弱から、入院後のリハビリテーション医療によって患者さんを効率よく回復させます。126点満点で評価したADL(日常生活動作)能力を平均40点もしくは35点以上(全入院可能期間を入院したと仮定して計算する)改善させ、7割以上の患者さんが自宅もしくは自宅に類した施設の退院を目指します。
 リハビリテーション診療は20分が1単位です。急性期病院では1日最大6単位の2時間までですが、目標達成のため回復期リハビリテーション病院では1日最大9単位の3時間まで実施が可能です。

ここがポイント

主な治療法
多職種によるチーム医療でADL 能力を改善
 病棟には専任の医師が配置されていますが、医師だけで目標を達成することは困難です。病棟の看護職員の協力を得て、さらに病棟には実際にリハビリテーション診療を行う専従の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も複数名配置されており、リハビリテーション実施時間だけでなく、病棟での生活のなかでもチーム医療によりADL能力の向上を図ります。制度面での援助をする社会福祉士や栄養管理面で援助をする管理栄養士なども病棟に配置されており、多職種による定期的に開かれるカンファレンスで方針を統一し、多職種が協力して患者さんのリハビリテーション診療にあたります。
各医療・介護のプロによるチーム医療の多彩なメニュー
 回復期リハビリテーション病院では、患者さんがいち早く元の生活が送れることを目指します。ADL能力(起床、歩行、飲食、排泄、入浴、会話、記憶、交流、問題解決能力など)を改善し、自立できるように、多職種チームによるカンファレンスを行います。その上で各専門職種が図1※のようにそれぞれ役割を分担し、協力し合って、患者さん一人ひとりに合わせたリハビリテーション診療を提供しています。
 また退院に際しては家屋調査を行い、患者さんの状態を考えて家屋改修の要否の判断なども行います。
 最近はリハビリテーション診療にも、ロボット技術やコンピューター技術が取り入れられ、歩行機能、上肢機能の改善を図るロボット、会話、記憶、注意力などの知能の改善を図るコンピューター技術やVR(バーチャルリアリティ)技術が活用されつつあります。効率よいリハビリテーション医療の実施のためにもさらなる最新技術の導入が期待されています。
 また急性期病院での原病治療中に患者さんの栄養状態が悪化することは多々あります。特に高齢の患者さんは発症前からサルコペニアという加齢による筋肉量の減少があり、より体力や抵抗力が低下しています。栄養不良、サルコペニアの状態ではリハビリテーション診療の効果も減弱します。
 病院内で医師、管理栄養士、言語聴覚士、看護師、薬剤師などの多職種による栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)が組織され、チーム医療として入院患者さんの栄養状態の改善を図る活動も行われています。栄養面からも患者さんの回復を図ることが重要だと思います。

チーム医療を担う各職種

※『名医のいる病院2023』(2023年1月発行)から転載
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