【疾患の特徴と主な治療法解説】05 視力矯正・近視・老眼~近くや遠くがぼやけて、生活に不具合が生じる

近視や遠視は遠くや近くがぼやけて見えない状態です。眼鏡なしの裸眼生活を送るため、手術で視力を矯正する方法があります。老眼は患者様の生活様式などを聞いた上で、手術も含めた、最適な治療方法を提案します。
疾患の特徴
網膜に焦点が合わず、ぼやけて見える
 カメラに例えるなら、近視や遠視はピントの問題、老眼はズームの不具合です。
 カメラの場合、被写体の像はレンズを前後に動かしてピントを合わせ、フィルムに画像を焼き付けます。同様に、人が物を見る時、目に入った光は角膜と水晶体を通り屈折して網膜に写し出されます。人間の目はリラックス状態の時、レンズ役の水晶体は薄くなります。近くを見る時、水晶体は周囲の筋肉、毛様体の緊張で厚みが増し、近くに焦点が合います。これが調節です。
 近視の眼は眼球の奥行きである眼軸長が伸びて長いため、網膜の手前でピントを合わせてしまいます。遠視は眼軸長が短く、ピントの合う位置が網膜より後ろにある状態です。
 老眼は水晶体が硬くなり厚みが変化しないことによる調節力の衰えです。45歳前後から近くのものが見えにくくなる原因です。
 目の調整力はジオプターという単位で算出します。これは焦点距離をメートルで表した際の逆数を取ったものです。例えば、焦点が合う距離が1mならば1ジオプター、3分の1mならば3ジオプターです。ちなみに、読書や新聞を読むには3ジオプター以上あれば、不便を感じません。目の調節力は加齢で減少します。
 一般的に45歳前後まで調整力は約3ジオプターあり、60歳前後で目の調整力はほぼ失われます。老眼は一生進行せずに、60歳前後で止まります。

発症部位

主な治療法
レーシックは光の屈折率を弱めて矯正
 近視や遠視、乱視は視力矯正できます。その方法の一つが、屈折矯正手術のレーシックです。
 レーシックは角膜の中央部分にレーザーを照射。その部分を人工的に扁平化、突出化させ、光の屈折率を弱めて矯正します。術前、フラップと呼ばれる蓋状のものを角膜の表面に作り、術後の傷を保護します。海外ではポピュラーな手術で、米国ではスーパーマーケット内の一画でデモンストレーションして、手術を呼びかけるほど身近です。
 さまざま種類がある中でも、特筆すべきは、今までレーシック手術が禁止だったパイロットや宇宙飛行士も受けられるアイレーシックです。他よりも上質に見える点が特徴です。アイレーシックは最新機器で精密に解析した高次収差のデータを活用し、デジタル制御でレーザー照射します。光がにじむハロー、ぎらついて眩しく見えるグレアが抑えられます。
 角膜より内側に入れるレンズ、フェイキック IOL(有水晶体眼内レンズ)のひとつ、 ICLを希望する方が増えています。後房(虹彩と水晶体の間)に挿入する ICLはレーシックのように、角膜を削る必要がなく、角膜が薄い方、強度近視などでレーシックが無理な方でも矯正可能です。
 老眼は多焦点眼内レンズで矯正すれば、メガネなしで遠くも近くも、ある程度、見られるようになります。近くを見る際、30〜40cmの距離で新聞の文字程度の大きさが読めるように設計されています。

治療法の種類

世界中から収集した症例実績のビッグデータが手術を指南
 視力矯正手術の際の強い味方が術中計測システム「ORA System」です。
 このORAシステムは白内障手術に用いる眼内レンズの挿入術の際に使用する術中診断ツールです。世界中に設置された医療施設から収集した症例実績をビッグデータとして有しています。それをもとに、手術で生じた変数を定期的に最適化、アップデートします。医師の手技にあった眼内レンズの度数、切開によって起こる多少の乱視、惹起(じゃっき) 乱視を検証し、カスタマイズされた手術を提案します。眼内レンズ挿入術で切開、または水晶体の除去を行うと、設定した度数や固定位置に誤差が生じる場合もあります。このORAシステムを導入することで、手術の精度が向上、より良好な症状改善が得られます。
 またレーシックでは、最大1257カ所の測定ポイントを瞳孔内の直径7mmの範囲に設置し、高次収差などを精密に解析する「iDESIGNアドバンストウェイブスキャン」、フラップの直径、深度、端部角度、形状をミクロン単位でコンピューター制御できる「IFSアドバンストフェムトセカンドレーザー」、生体組織をやけどさせずに切開、切除できる「STAR S4 IRエキシマレーザー」を駆使することで、手術の精度が飛躍的に向上しました。

現代の眼科治療の特徴

※『名医のいる病院2023 眼科治療編』(2023年3月発売)から転載
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