【疾患の特徴と主な治療法解説】06 眼瞼下垂~まぶたが垂れ下がり視野が狭くなる 

眼瞼(がんけん)とは、まぶたのことで、下垂とは垂れさがること。眼瞼下垂とは文字どおり、まぶたが垂れ下がり、視野が狭くなる病態を指します。
疾患の特徴
まぶたが下がって見えにくくなった
 「まぶたが下がってきて見えにくくなってきた」と感じたり、家族や友人から「最近いつも眠たそうに見える」と指摘されたりしたら、眼瞼(がんけん) 下垂かもしれません。上まぶたが下がってきて視野が狭くなるもので、肩こりや頭痛、疲れやすさの原因になることもあります。
 軽症の眼瞼下垂は上まぶたが下がっても瞳孔にはかかっていないもの、中等度は瞳孔を若干ふさぐ程度ですが、重症になると、まぶたが瞳孔をふさいでしまい、かなり視野が狭くなります。
 眼瞼下垂を大別すると、①先天的なもの(生まれつきのもの)、②後天的なもの(大人になってから発症するもの)、③偽眼瞼下垂(一見、眼瞼下垂に見えるが、実は違う病気)の3つに分けられます。
 生まれつきまぶたが下がっている場合、重度になると手術を検討します。治療しないと視力が成長せず、弱視になってしまう危険性があるからです。
 大人になってから発症するものは加齢やコンタクトレンズの長期使用などが原因であることが多く、まぶたを上げる筋肉と腱、また、それらと共同で働く上瞼板筋(ミュラー筋)が弱くなり、まぶたが下がります。
 まぶたを上げる筋肉に指示を与える運動神経が麻痺している場合もあります。その原因は脳梗塞や脳動脈瘤、脳腫瘍、動眼神経麻痺などで、思わぬ疾患が隠れている可能性があります。

発症部位

主な治療法
上眼瞼挙筋、ミュラー筋などを短縮・固定し、まぶたを引き上げる
 治療は通常、まぶたの筋肉が、どの程度機能しているかによって異なります。眼瞼下垂が視力に影響を与えず、患者さんが外見を気にしないなら、治療の必要はありません。
 眼瞼下垂が視力・見栄えのどちらか、あるいは視力と見栄えの両方に問題を引き起こしている中等症、重症の場合、手術が必要になります。
 まぶたを持ち上げる筋肉は、まぶたの中にある上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)、ミュラー筋、おでこにある前頭筋の3種類。ミュラー筋は交換神経に支配されており、感情が高ぶったときに目が大きく開いたり、眠くなったときに、まぶたが閉じたりするのはミュラー筋の働きによるものです。
 上眼瞼挙筋、ミュラー筋が伸び切ったり、薄くなったり、はがれたりして、うまく上まぶたが持ち上がらないものの、まだ機能している場合、上眼瞼挙筋の腱やミュラー筋を同時もしくは別々にはがし、短縮・固定する手術を実施します。手術は局所麻酔下で行われます。
 まぶたを切開し、筋や腱の後方の部分を前のほうの部分に縫いつけることで、筋や腱を短くします。筋や腱が短くなれば、まぶたを引き上げる力は強くなります。
 切開した傷は二重まぶたの線に見えるので、傷が目立つことはありません。同時に、たるんだ皮膚を切除することもできます。

治療法の種類

前頭筋の力を利用しまぶたを持ち上げる
 上眼瞼挙筋、ミュラー筋が非常に弱っており、機能していない場合、あるいは神経麻痺で全く動かない場合などは3番目の筋肉である前頭筋の力を利用して、まぶたを持ち上げる「つりあげ術」と呼ばれる方法を選択します。
 「つりあげ術」の手順は次のようになっています。2箇所切開する必要があります。
1 眉毛の上の部分を1cm程度切開する
2 まぶたの部分を2cm程度切開する
3 眉の部分とまぶたの部分の間にトンネルをつくる
4 そこに、ひも状の人工素材もしくは筋膜を入れる
5 ひも状のもので、前頭筋と、まぶたをつなぐ
 つまり、おでこ(前頭筋)の力を活用して、まぶたを上げるわけです。偽眼瞼下垂で、上眼瞼挙筋、ミュラー筋のどちらにも異常がなければ、各疾患に対する治療を優先します。
たるんだ皮膚を切除し偽眼瞼下垂を改善
 加齢などのために皮膚がたるみ、それが瞳孔にかぶってしまっている状態なら、たるんだ皮膚を切除することで偽眼瞼下垂を改善することができます。
 眼瞼下垂は「眼瞼下垂症」という病気に対する「眼瞼下垂症手術」が保険適用となっています。美容的な要素が強い場合、保険は適用されません。

眼瞼下垂の主な治療法

※『名医のいる病院2023 眼科治療編』(2023年3月発売)から転載
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