【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】001 中山 若樹(脳神経外科)第5回

【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】001 中山 若樹(脳神経外科)第5回

各領域のプロフェッショナルである「名医」へ、その生い立ち、医師になったきっかけ、実績、そして未来へのメッセージをインタビュー。 
 
一般生活者へ最新医療を啓蒙、医師へのメンタルブロック解消により病院や医師選びの選択肢の拡大を実現し、個々にとっての最適な医療の受診につなげることを目的にしています。
1人目は脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの脳血管障害におけるプロフェッショナル 中山若樹先生(柏葉脳神経外科病院 常務理事・副院長/高度脳血管病センター長)です。
8回にわたるシリーズの5回目は「私の現在位置と未来について(前編)」になります。

第5回:患者さんに寄り添うことを第一に考えて
日本を代表する脳神経外科の拠点病院を目指して
—現在、柏葉脳神経外科病院では、どのようなチーム、体制にて従事されていますか。
民間施設で、いわゆる研修医はいません。みんな専門医です。
うちの理事長の寺坂俊介先生とは北大で結構長年一緒にいたんです。寺坂先生は脳腫瘍が専門だったんですよね。それから今、もう1人の副院長である小林浩之先生。 同じく北大で彼も脳腫瘍が専門で一緒にいた期間が長いんです。
小林先生は先に医局長で苦労して、その次僕が医局長って感じで、机並べていましたし、寺坂先生もずっと一緒で、外来も隣のブースで、その日の診察終了後には、よくいろんなことを語り合っていました。
脳腫瘍と脳血管障害っていう別ジャンルではあるんですけれど、 外科治療ってことに対するシンパシーとかスピリッツみたいなものは同じもの、共通だなって思っていて、歯を食いしばって、とことん頑張って、決して妥協しないでやるぞっていう、そういうベクトルでその手術や治療に当たるっていうモチベーションで通じ合うところは元々あったと思います。
寺坂先生は先に北大を出て柏葉に来られていて、 僕の方が数年遅れて、いろんな経緯があって、呼んでいただいたということですね。
脳血管障害治療では、10年ぐらい前からこの柏葉にいてずっと頑張ってる丸一勝彦先生(副院長)、そして僕が入らせていただいています。
この柏葉では、寺坂理事長が今回の新病院開業にあたって、日本を代表する脳神経外科の拠点病院になるんだと言われていて、そういうことを目指していくんだっていうのが僕らの思い、願いなんですよね。
そこを実現するということで、脳血管障害の外科治療に関しては、僕が頭として、いろんなものを持ち込んでチームって形にさせていただいています。
手術の状況を若手たちと語る中山
手術の状況を若手たちと語る中山
同じ副院長の丸一先生、今40歳前後ぐらいの後輩たち3人もいます。あとは丸一先生とその3人との間ぐらいの世代で、カテーテル血管内治療を行う菊地統先生が加わってくれていて、僕を含めた全部で6人ぐらいが実際に血管障害の外科治療に携わる直接の部隊ですね。
それ以外に、もちろん神経内科の先生もいますし、循環器の先生とか、他のジャンルの先生もたくさんいらっしゃいます。あともう1人は先ほどから話している松澤先生ですね。松澤先生は留学先のカリフォルニア大学デービス校の中田先生のラボで僕の前に留学されていた先生で、現地で4か月ほど一緒に過ごした期間があって、ここで公私ともに本当に面倒みていただきました。松澤先生はその後帰国されて、いったん北大に戻って、そのあと僕と入れ替わるように新潟大学脳研究所の中田先生の研究室で、准教授としてかなり長年、研究生活をされていたんです。僕が柏葉に来た半年後に、その松澤先生が柏葉に来てくれて、また一緒に仕事をすることになりました。ものすごいめぐりあわせですよね。
彼も脳神経外科医ですが、ずっと研究畑でずっとやってきて、 今はまた新しい画像解析法を編み出したり、AIを用いた臨床研究をやってくれています。
松澤先生が研究面でのチームっていうことで、6プラス1が実装的な部隊っていう感じになると思います。
手術をしながら語りあう中山と寺坂理事長
手術をしながら語りあう中山と寺坂理事長
—主にどのような患者さんの治療にあたっているのでしょうか。
患者さんは脳血管障害なので救急の方ですといわゆる脳卒中、クモ膜下出血。
高度脳血管病センターとしては、脳梗塞でカテーテルで血栓除去したり、 脳出血で開頭術や脳梗塞の緊急治療など、そういう脳卒中にまつわる緊急治療でもそうですし、 僕が主に直接関与するのは、発症前に見つかってる疾患で、未破裂動脈瘤、脳動静脈奇形、 血管の狭窄とか閉塞、首と頭の中のバイパスとか頸動脈の治療、手術をしなきゃいけないような、そういう疾患になります。
それは何か別の小さな脳疾患をきっかけに検査で見つかる人だとか、脳ドック的なもので見つかったり、循環器とか他のとこで何かしらの検査で偶然見つかったりして、そこで外科治療が必要な人が、僕が1番直接関与してるところではありますね。その患者さんをご紹介いただいたりして、治療に当たらせていただいています。僕の永遠のテーマですね。
大学での20年弱、さらにさかのぼればその前の研鑽期間からずっと極めようと追求し続けてる動脈瘤、動静脈奇形、バイパス、頸動脈の手術。それが僕のメインの対象です。

現在の柏葉脳神経外科病院のA館。この中で高度脳血管病センターを構築している。
患者さんに寄り添うことを第一に考えて
—患者さんの治療にあたって、大切にしていることを教えてください。
発症したら別ですが、脳外科の血管の病気がほとんどそうなんですけど、僕が今言ったような、その病気が見つかって手術しなきゃいけないような疾患は、その時点では症状が無いわけですよね。
発症したら生命や重大な障害に繋がるような症状を起こさないようにするために手術をしなきゃいけない疾患が対象なので、 患者さんにしてみたら実感がないわけですね。例えば、胃が痛いから胃を取らなきゃとか、骨折してるから治さなきゃとかではなくて、 自分では自覚症状が全くないものじゃないですか。
そこにメスを入れられるとか、管を入れられるとか、物理的に何か手を下される治療を受けるっていうのは、 要するに単純に脳の手術を受けなきゃいけないって言われても怖いですよね。
でもそういう病気があると言われたことも多分怖いし、不安になると思うし、だから患者さんの動揺ってすごく大きいんだろうと思うんですよね。
しかもそれが突然来る、癌も同じような話は当然あると思うんです。見つかったらどうしようって。でも、今はいろんな治療で本当に救うことができる時代になったと思います。癌とはその時間の流れが違うかもしれないけど、脳の血管の病気っていうのも、やはり見つかったらものすごい不安だし、ほっといたらとんでもないことになるかもしれないっていうことが理解できるし、かといって治療となると自分の頭をいじられるという恐怖。そのジレンマって計り知れないと思うんですよね。
僕らにしてみたらもう日常ですから、もちろん一定のリスクは理解する必要ありますけど、ちゃんと治療すべきですと言えますが、 患者さんからしてみたらやっぱりすごく不安は大きいはずですよね。
病気の存在自体も恐怖だし、治療するのも恐怖だし、でもそこで手術や治療を受けていただくいうことは、その家族も本人も一世一代っていうか、一生に一度のね、自分の人生と命かけて、僕の目の前に来てくれてるわけですよね。だから、その思いにちゃんと応えてあげたいなっていう思いもあります。
ですから、当然、その手術の中身を、自分を極めることはもちろんなんですけど、 その前に患者さんに説明するとか、患者さんと家族がその気持ちを整理して、 前向きな気持ちになって、ちゃんと望んでこれるようにしてあげるっていうのは大切だと思っています。
不安を除くことはできないけれど、とっても前向きな気持ちになれるように、ちゃんとお話してあげて、あるいは相談に乗ってあげる。
絶対手術とか治療することだけが選択肢ではないですから、経過を見るっていう選択肢も当然存在するわけで。その上で、患者さんと家族が1番いい選択を、納得できる選択をできるようにね。
で、その自分が選択したものに前向きに進んでいけるように、色々相談乗ったり、説明してあげたりってことがすごく大事かなと思ってて。それはすごく僕は重要視してます。だから僕の外来は長いんです(笑)。
疾患について語る中山
—6回目は「私の現在位置と未来について(中編)」になります。
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