【コラム:近代医学・生理学の幕開け】18世紀になっても「自然発生説」は命脈を保っていた-ラザロ・スパランツアーニ

【コラム:近代医学・生理学の幕開け】18世紀になっても「自然発生説」は命脈を保っていた-ラザロ・スパランツアーニ

聖書は「自然発生説」を支持していた
「自然発生説」は過去の特定の時点で無生物から生命が誕生したと主張しているわけではありません。親なしで生まれる生物もいると主張するもので、アリストテレスに始まり、長く信じられてきました。18世紀になっても、なお命脈を保っていました。
自然発生説を支持する学者たちは聖書の中に自然発生が書かれているので、無生物から生命が生じるという見解に立つべきであると考えていました。
イギリスの博物学者、ニーダムは自然発生説を証明するための実験を行いました。1748年、羊の肉汁を煮て、それをコルク栓でふたをした試験管に入れました。数日後、肉汁は微生物であふれていました。
最初に熱したことで肉汁中の微生物は死滅したわけですから、微生物は死んだ物質から生じたと考えられ、少なくとも微生物は自然発生すると主張しました。
この結果に疑問を抱いたのがイタリアの生物学者、ラザロ・スパランツアーニでした。
スパランツアーニはニーダムの実験は加熱が不十分で、肉汁の中の微生物が死滅したわけではないと考えました。そこで1768年、栄養に富んだ液を準備し、いったん煮沸したうえで、さらに35~45分間煮沸しました。その液をフラスコの中に入れ、密閉したところ微生物は生じませんでした。
自然発生論者は空気中に生命のもとがあると考えた
決定的な結果ですから、自然発生説の息の根は止まったかに見えましたが、多年に渡って支持されてきた考えでしたから簡単には、ひっくりかえりません。自然発生論者たちは次のように反論しました。
空気中には「生命のもと」のようなものがあり、知覚もできないうえ知られてもいないが、それが無生物に生きていく力を与えるのである、と。彼らはスパランツアーニの実験の煮沸によって「生命のもと」が壊され、微生物が発生しなかったのだ、と主張したわけです。
※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載
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