【コラム:近代医学・生理学の幕開け】「自然発生説」の誤りを示す対照実験を実施-フランチェスカ・レーディ

【コラム:近代医学・生理学の幕開け】「自然発生説」の誤りを示す対照実験を実施-フランチェスカ・レーディ

1500年に渡る呪縛を断ち切った
ガレノスは2世紀の人で、ハーベイが「血液循環論」を発表したのが17世紀。実に「ガレノスの呪縛」は1500年に渡ってヨーロッパの医師・生物学者の頭を支配してきました。ハーベイは、その呪縛を断ち切ったわけです。
ハーベイは生物起源の問題にも一石を投じました。17世紀当時、人間や大きい動物は母親から、あるいは母親が生んだ卵から発生するが、ウジ虫のように小さな生物は腐った肉などの腐敗物から生じると考えられていました。無生物から生物が生じるので、この説を「自然発生説」と呼び、大半の生物学者が、この説を支持していました。
ところが、ハーベイは違いました。『心臓の血液の運動について』の中に、小さな生物も大きな生物と同様、非常に小さくて目には見えない種子や卵から生まれたのだろうという記述があります。
ハーベイは非常に細くて目には見えない血管を想定して血液循環論を唱えていましたから、目には見えない種子や卵が存在すると考えたのも必然でした。
フラスコに肉を入れ「対照実験」を行った
ハーベイの本は大きな影響力を持っていました。ハーベイの本を読んで感激したイタリアの医師、フランチェスカ・レーディはウジの自然発生説が正しいかどうかを確認する実験を行いました。
1668年、レーディは、さまざまな種類の肉が入ったフラスコを8本用意しました。うち4本は密閉し、4本は開放したままにしました。ハエが寄ってきて開いた容器の肉にだけ止まり、それらの容器からはウジが発生しました。密閉した容器からはウジは発生しませんでした。レーディは次にフラスコをガーゼでおおった実験を行ったところ、ウジはわきませんでした。
ウジはハエの卵から発生しているように見えました。この結果は自然発生説と相入れません。大きな成果でしたが、レーディの実験は広く受け入れられませんでした。自然発生説の崩壊は19世紀のルイ・パスツールの登場を待たなければいけませんでした。
※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載
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