【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】002 大圃 研(消化管内科)第5回

【名医からのメッセージ~トップランナーが語る半生】002 大圃 研(消化器内科)第5回

各領域のプロフェッショナルである「名医」へ、その生い立ち、医師になったきっかけ、実績、そして未来へのメッセージをインタビュー。 
 
一般生活者へ最新医療を啓蒙、医師へのメンタルブロック解消により病院や医師選びの選択肢の拡大を実現し、個々にとっての最適な医療の受診につなげることを目的にしています。
2人目は消化器内視鏡治療におけるプロフェッショナル 大圃研先生(NTT東日本関東病院 消化管内科部長・内視鏡部部長)です。
8回にわたるシリーズの5回目は「医師になってからの軌跡(前編)」になります。

第5回:ライフワークは「神の手」から「教育」へ
新たな環境を求めてNTT東日本関東病院へ
—異動されたきっかけ・目的について教えてください
当時はESDを実施しているところは限られていたので、だんだんと自分の知名度もあがり、患者さんが増えてきたり、全国の医師から紹介されるようになってきて、僕のところで内視鏡治療をやってみたいっていう先生もちらほら出始めてきました。
ただその時の待遇では人を採用することができなかった。あとは医局のポストに関連して毎年起こる「大圃退職騒動」や非常勤ゆえに内視鏡機器の更新が進まないこともあり、さすがにこのままでは未来はないと感じ、どこかに出るしかないかと。
それから探しはじめて、大学の医局とのしがらみがほとんどなさそうだったし、機器は古かったけど検査室がたくさんあったのでここ(NTT東日本関東病院)に決めました。
実際移ってからの理想と現実
—実際に移られていかがでしたか
最初は3人からスタートしました。今から15年くらい前ですね。
今でこそ、ここの内視鏡室は日本の代表的な施設の一つといわれていますが、当時は内視鏡機器も一世代くらい遅れていて、ちょっと衝撃的でした。
ただ、これまで一人でやってきて、今さら人のコントロール下に入りたくない思いもあり、検査室の数もたくさんあったので、自分でイニシアティブをとって進めることはできましたね。
期待されて入職したので、出張は別として、24時間×365日対応する意気込みでしたし、実際にやってました。ただ、1年くらいやって、このままではもたないと感じたので、マンツーマンで一人ひとり育てていきました。育つまでは治療も救急対応も全部自分がやっていましたね。そして、今では15人の医師が在籍するようになりました。
NTT東日本関東病院に入った頃は、想定以上に古く遅れてもいましたが、施設や設備のマイナーチェンジも繰り返し行いつつ何とかやっています。
NTT東日本関東病院での立ち上げ時
NTT東日本関東病院での立ち上げ時
「教育」がライフワーク
—新たな取り組みとして行われている「オンライン受診相談」について教えてください
オンライン受診相談(セカンドオピニオン)は病院が主導して2020年8月からスタートしています。はじめるのであれば、まずは私のところからという病院の考えもあり、消化管内科からスタートしました。
通常の診察ではなくセカンドオピニオン(=相談)なので、件数はそれほど多くはありません。ただ、遠方から来る患者さんの場合は、実際に受診するとなるとそれなりの時間やお金がかかりますし、画像があれば治療できるかの判断はある程度できるので、オンラインで相談できることは有用と感じています。
—「オンラインサロン Ohata Endosalon」についても教えてください
私のライフワークは「教育」です。なので、オンラインサロンはあくまでもそのツールのひとつですね。
以前は「神の手」になりたいと思って、できることすべてを自分でやっていました。ESDに夢中になっていましたが、ここで働くにつれて僕のマインドが変わっていきましたね。
患者さんは増え続けていって、外来だけでなく検査、内視鏡治療、病棟回診もあり、業務がパンクしかかったことで一人ができることの限界を知り、チームを作りたいと考えました。そこから「神の手」から「教育」へ私のライフワークはシフトしていきました。
また、大企業の社長さんから「人を育てるのは1番大事なことで、それをしないと企業も組織も継続することができない。教育がライフワークだって言われるんだったら、胸を張って 教育でいくべきだ」のお言葉をいただき、後押しもされました。
僕の場合、誰からも教わることなく、自分一人でやってきましたが、その分すごく時間がかかってしまったので、自分がこう教えてほしかったなということを考えて、教えていますね。
あとは「言語化」。「こんなふうに」「こうやってみて」とかではなく、できない理由、違いをきちんと追求して、論理的かつ明確な言葉で伝えています。
できる人は教えなくてもできるようになるのですが、できない人をどうステップアップさせていくか、ドロップアウトしないようにするかが指導者の最大の責務だと思っていて、そこには「言語化」がとても重要だと思っています。
そして、僕が教えたすべての先生が「さすが大圃先生のところで学んだ人は違うな、やっぱりすごいな」って言ってもらえるよう「教育」にあたっています。
若手医師を指導
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—6回目は「医師になってからの軌跡(後編)」になります。
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